そこへ母さんがまたまた口を開いた。 「お父様の遺言なんだもの。仕方ないじゃない……ってあら? どうしたの二人とも。もしかして言ってなかったかしら?」 硬直する俺と花音をよそに、母さんは瞬きを繰り返し、交互に見つめ返してくる。 「誰と誰が?」 花音が開きっぱなしの口をなんとか元に戻し、口を動かした。 俺はますます眉間に皺を寄せ、母さんと父さんーーそして自分の手元にある手渡された礼服を見る。 「もちろん、花音と葉桜 月夜くんよ」 母さんはにっこりと満面の笑顔を浮かべ、さも当たり前のように胸張ってそう言った。 ーーなぁ、母さん。 だけどその人……。 いったい……。 誰ですか?