こんなボクだけど愛してるっ!
第二話





chapter:花束




(二)



 おかしな人間に出逢ったその日の夜は、気兼ねなく本来の姿のままでいられる場所を自慢の鼻で嗅ぎ当てた。


 そこはちょっとした小高い丘だ。人間の匂いはしない。どうやらあまり知られていないらしい。足下にはたくさんの草が絨毯(じゅうたん)のように生えている。

 真尋はこの場所を自分の住処とすることに決めて、心地好い草の上に寝転んだ。


 ……夜は冷える。けれど妖狐の里よりはずっとあたたかい。妖狐の里は人間が住む下界とをまるで結界を張るかのように遮断し、常に大雪が降っていた。寒いのは当たり前と言えば、当たり前。けれども、あの寒さとはまた違う孤独という寒さが真尋を覆っていた。

 真尋は孤独が嫌いだった。――いや、孤独を好む者はこの世に誰ひとりとしていないだろう。それ以上に嫌いだと言う方が正しいかもしれない。落ちこぼれの真尋は友達はおらず、たとえ仲間から爪弾きにされてたとしても、それでも健康な両親はいたし、何よりも最弱な自分を一番可愛がってくれた祖父がいた。

 しかしながら、ここには両親も祖父もいないのだ。


 頭上には満ちた月だけがぽっかりと浮かんでいる。


 真尋は孤独を思い知り、寒さから身を守るために三つの尻尾を持つ妖狐の姿に戻ると身体を丸め、目を閉じた。





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