chapter:おちこぼれ妖狐。 これだから自分は同族たちに馬鹿にされるのだ。 そして今は目の前の人間に馬鹿にされるに違いない。 真尋は大きく腹が鳴ったのにも気づかない振りをして、依然と変わらず鋭い切っ先を男に向けたままでいると、男の薄い唇が動いた。 「腹が、減っているのか?」 「そうだ。お前、何か持ってるだろ? さっさと寄越せ!」 真尋は折れそうになる心をなんとか保ち、刃を喉元に突きつけ続ける。唸り声を上げながらそう言うと、男は閉ざしていた眼を開けた。 黒の眼をしているだろう彼の目は、けれど月光を浴びているからか、どこか青色に輝いている。 男は人間なのに、どこか真尋たち妖狐族と同じ雰囲気をしているように思えた。 それは空腹が極限までに達したせいだろうか。 「それは無理というものだ。時間をいただかねば何も作れない」 「嘘だ! お前から甘い匂いがしたぞ。何か食いものを持っているだろうっ!!」 「甘い、匂い?」 「しらばっくれるな!! 何か持ってるだろっ。さっさと寄越せ!!」 「そう言われても、ないものはない」 刃物を突きつけられているというのにやはり緊迫感の一欠片も感じない。きっぱりとした口調で話す男はしばらく考えたのか、一度閉ざした後に再び薄い唇が開いた。 「ああ、あったな。たしか……金糸雀(かなりあ)」 男が誰かしらの名を呼ぶと間もなくしてどこからともなく年若い女が現れた。 女は年の頃なら十八歳ほど。 |