追って追われて恋模様。
第四話





chapter:追って追われて恋模様。





分かっているのに、自分のやましい心を止められなくて……。



いざ、先輩と向かい合うと罪悪感がぼくを襲う。

ぼくは先輩から顔を逸(そ)らし、ズボンの生地をギュッと掴んだ。

きっと、怒られる。


覚悟して、目をギュッとつむる。


だけど、先輩は怒る素振りを見せなかった。



「謝らなくても良い。俺も同じだから」

「えっ?」

思ってもみない言葉を耳にして、反射的に顔を上げると、先輩は、眉尻を下げて、にっこり微笑んでいた。


「視線を送ってくる君が可愛くて、つい、俺も君を見ていたから。

……だから知っていたんだよ。君のお母さんが看護師をしていて、今日は翔夢くんは、ひとりきりだっていうことを……。」


「あっ、あのっ?」

先輩からの言葉は、ぼくが予想していたものじゃなくて、焦ってしまう。


口は開閉を繰り返すばかりで、言葉が出ない。



「好きだよ。振り返れば、普段はあまり笑わない君が頬を染めて、心の底から嬉しそうに微笑んでいる君が……。

お母さんを手伝うために、アルバイトをしていることも。

そうやってアルバイトだけでも大変なのに、勉強だって、順位を落とさず、ずっと真ん中よりも上をキープしていることも――とても健気で、可愛らしい」


先輩の、真っ直ぐな視線が、ぼくを射貫く。


「……せんぱ……」

見とれていると、ベッドに押し倒された。


「あ、あの……せんぱいっ!?」

ぼくの、ずっと目の前には、格好いい先輩がいる。





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