追って追われて恋模様。
番外編 第二話





chapter:電話して抱かれて恋模様。







 ひとりきりの夜は、大好きな三浦先輩と過ごしていた日中が嘘のように、心細い。まるで、ぼくははじめから、ひとりぼっちなんだと言われているように……。

「……けんと……」

 けっして本人の前では言えない名前を、スマートフォンの画面上に映っている電話番号を見ながら言ってみる。

 先輩は、もう寝ただろうか。

「会いたいな〜」

 先輩とお付き合いしている今は良い。だけど、いつかはぼくとお母さんを捨てたお父さんみたいに、どこか遠くへ行ってしまうんじゃないかって、そう思ってしまう。だって、ぼくは何の取り柄もない奴なんだ。

「会いたいよ、けんと……好きなんです……せんぱい」

 切なくて、悲しくて、嗚咽を漏らし、静かに泣いていると……。

「え? 翔夢くん?」

「はぅっ!?」

 先輩の声がスマートフォン越しから聞こえてきてビックリした。

 心臓が、一瞬止まる。

 どうやらぼく、いつの間にか通話ボタンを押してしまっていたらしい。

 うっわ、間抜け。間抜けすぎるっ!!

「あ、あのっ! えっと!!」

「待ってて、今からそっちに行くから」

 ぅええっ!?

「あ、あの、せんぱっ」

 良いです、ぼく、大丈夫です!!

 そう言おうと口を開けると、すぐにスマートフォンからは、ツーっていう電子音が聞こえてきた。

 ど、どうしよう。先輩来ちゃうよっ!? ぼく、もう寝間着だよ? パジャマだよっ!? 可愛くもないし……って、それはいつもと変わらないか。

 鏡を覗き込み、わたわたしていると……。


 ピンポーン。

 静かな家の中で、チャイムが響いた。

 きっと、先輩だ。


「あの、せんぱ……んぅっ」

 夜遅くに呼び出したりしてごめんなさいって謝ろうとしたら、ぼくの唇が塞がれてしまった。

 そうかと思えば、先輩の口から飛び出した舌が、ぼくの口内を自由気ままに動く。

「んっ、っふ……」

 クチュ、クチュ。

 先輩の舌がぼくの舌に絡んで濡れた音が玄関に響く。


 上顎から歯列を通り、下顎へと移る。

 ぼくの舌が、先輩の唇によって思いきり吸われた。

「ふぁ……」


 もう、ダメ。

 ぼくの腰が砕けてしまった。

 先輩は、口づけだけでも腰が抜けたぼくの膝下に腕を通し、横抱きにして寝室まで運んでくれた。

 ふかふかなベッドの上に寝かされて、ぼくの唇がまた塞がれた。

 そして、口の端を伝い、首筋から鎖骨へと移動していく……。

「せんぱ……」

 うそっ!?

 気がついた時には、いつの間にかぼくはパジャマを着ていなくて、裸体を披露していた。

「やっ、せんぱっ!!」

「俺の名前を呼んだ可愛い君が悪い。会いたいとか、そんなことを言われたら、もう抱くしかないじゃないか」

 先輩は早口でそう言うと、ぼくの乳首に吸い付いた。

「やっ、やっ、せんぱ、そんなに吸ったら、おっきくなっちゃ!!」

「なればいい。可愛いここもすべて、俺のものだ……」

 甘噛みされ、歯の隙間からチロチロと舐められる。

 一方を終わると、もう一方も吸ったり舐めたりを繰り返した。

「……っふ、ああっ!!」

 その度に、ぼくの腰は跳ね、ベッドのスプリングが軋みを上げる。

「可愛い、ここも、たっぷり大きくしてあげるね」

 先輩の手がぼくの陰茎を包み、扱いてくる。

 先輩の手が動くたび、陰茎からは先走りが放たれ、水音が生まれる。

「あっ、あっ、あっ!!」

 快楽しかないぼくの頭は、もう喘ぐしかできない。

 先輩。先輩、好き。大好きなんです。

「せんぱ、抱いて、お願いっ!!」

「可愛いすぎる」

 ぼくは、先輩によって開脚させられると、顔の隣に両足を配置させられた。

 お尻の孔が先輩に見られちゃうっ!!

 そう思ったら、お尻の孔がヒクヒクしちゃうわけで……。

「可愛いね」

 指が二本、一気に挿し入ってきた。

「っひ、あああっ!」

 指に絡まっているぼくの流した先走りが、孔を通り、内壁を擦る。その度に、いやらしい淫猥な水音が立つ。

「やっ、そこ、こすっちゃ、だめっ!!」

 ぼくが感じる一点を狙い、二本の指が抜き差しをはじめてくるからたまらない。

 ぼくはいやいやを繰り返し、先輩に訴える。

「可愛い、可愛いね」

 だけど、先輩は全然聞いてくれない。それどころか、感じる部分をさらに強く擦ってきた。

「っふ、ああああっ!!」

 目の前には、先輩からもたらされる行為で、大きく膨れていくぼく自身。

 自分が放った先走りを、被ってしまう。

 視界が歪む。

 目からこぼれ落ちる涙は、快楽のものだ。

「せんぱっ、ぼく、もうっ、抱いて抱いてっ!」

「どうやって?」

「っふ、んあっ!!」

 意地悪だ。先輩はすごく意地悪だっ!

 本来なら、ものすごく恥ずかしい言葉。だけど今は……押し寄せてくる疼きに耐えられない。

 早く、先輩が欲しい。この状況をなんとかしてほしい。

 だからぼくは、口を開く。

「おねがっ、ぼくの孔に、先輩の、おおきいの、突き刺してっ!!」

「それだけでいいの?」

 ――ううん、違う。

「もっと深いところで貫いて……せんぱいの、液、ぼくのお腹に、流してっ!!」

 ぼくが言い終えると同時に、先輩はもうすでにぼくがしてほしいことを知っていたらしい。

 孔の中に、熱くて大きな先輩の陰茎が入ってきた。

 思いきり深くまで、一気に突き刺した。

 内壁が先輩の形に合わせて広がっていく……。

「っひ、ああああああっ!!」

 お腹に、先輩の白濁がたくさん注がれた。

 心が満たされ、ぼくも自身から白濁を流し、イってしまった。


「……ごめんね、君があまりにも可愛くて、どうにもセーブができなかった……」

 先輩に抱かれ、全部を拭かれ、綺麗にしてもらったぼくは今、大好きな彼と一緒にベッドの中にいます。

「すき、だから。へいき」

 喘ぎすぎた声は、掠れてしまっていた。

「可愛いな〜、ほんとに」

 先輩はそう言うと、ぼくの額に口づけしてくれた。

 その行為がくすぐったくて、心地いい。

 先輩、意地悪なところもあるけれど、すごく好き。

 ぼくは、先輩の広い胸に頬を擦り寄せ、甘えた。

 目を閉じると、抱かれた疲労からか、それとも安心してか、眠気が襲ってくる。

「そういう仕草もね……本当に困ったなあ」

 ボソリと呟く先輩の声を、どこか遠くで聞きながら……。



 **END**


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