chapter:繋いで繋がれて恋模様。 今日は、大好きな先輩とはじめてのデート。 今日は一緒にお洋服を見るんだ。 すごく嬉しい。 だけど、お外では手なんて繋げない。 学校は、男子校で、男の子同士の恋愛もしている人はよく見かける。だけど、世間では、やっぱりそういうの、おかしいわけで……。 「っぷ、すいません」 人が多い交差点。ぼくはさっそく、先輩とはぐれてしまった。 いつまでもトロトロ歩いているぼくが悪い。 先輩は……そうやって、ぼくを捨てるのだろうか。 何度抱かれても、不安になってしまう。 だって、ぼくと先輩は同性な上に、釣り合わないんだ。 先輩はすごく格好良くて、運動神経もよくて……人付き合いも上手い。だけど、ぼくは違う。 少し前まで、先輩のストーカーをしていたくらい根暗で、父親にも捨てられてしまうくらい、煩わしい子供なんだから……。 ……じんわり。涙が溢れてくる。 先輩の姿どころか、行き交う人も見られなくなってしまった……。 ドンッ! 「っつ!!」 立ち往生してしまったから通り過ぎる人と肩がぶつかって、固い地面に倒れてしまう。 「っひ、っふぇ……」 先輩は……もうぼくを探しにきてもくれない。 「せんぱっ、せんぱ……」 ひとり、泣いていると……。 「翔夢くん見つけた! 離れてしまってごめんね」 とっても好きな人の声が頭上から聞こえたかと思ったら、彼はグイッって、ぼくの腕を掴んだ。 「せんぱ……」 もう、捨てられたのかと思った。 もう、嫌われたのかと思った。 だけど、先輩はそうじゃなくて……。 先輩は、ちゃんとぼくを探しに来てくれた。 こんなに……こんなにたくさん、人がいるのに……。 「せんぱいぃぃぃ」 「おっと、ごめんね。もう離れないからね」 人の目があるとか、そういうことも関係なく、ぼくは先輩に飛び込んだ。 腰に両手を回して、しがみつく。 そうしたら、先輩の広い背中が、しっとりと濡れていることに気がついた。 もしかして、ものすごく走ってぼくを探してくれたの? 先輩……。 「好き。すきぃぃぃ……」 さっきよりも強く、先輩の腰にしがみつき、告白すると――……。 ポンポン。 頭を撫でてくれる先輩の手が優しくて、もっと泣けてくる。 「あっ、あのっ!! 手っ!!」 ひとしきり泣いたあと。 ぼくは、先輩に、指と指とを絡むようにして、手を繋がれてます。 「うん? ああ、離れないためにね」 そうじゃなくって、なんか、この繋ぎ方って、繋ぎ方って!! 「っは、うっ!!」 どうしよう。先輩とえっちしてないのに、しているみたいに、身体中が熱くなる。 「可愛い」 クスッて笑う、先輩。 ぼく、どうしよう。ドキドキするよおおおおおっ!! **END** |