追って追われて恋模様。
番外編 第三話





chapter:繋いで繋がれて恋模様。







 今日は、大好きな先輩とはじめてのデート。

 今日は一緒にお洋服を見るんだ。

 すごく嬉しい。

 だけど、お外では手なんて繋げない。

 学校は、男子校で、男の子同士の恋愛もしている人はよく見かける。だけど、世間では、やっぱりそういうの、おかしいわけで……。

「っぷ、すいません」

 人が多い交差点。ぼくはさっそく、先輩とはぐれてしまった。

 いつまでもトロトロ歩いているぼくが悪い。

 先輩は……そうやって、ぼくを捨てるのだろうか。

 何度抱かれても、不安になってしまう。

 だって、ぼくと先輩は同性な上に、釣り合わないんだ。

 先輩はすごく格好良くて、運動神経もよくて……人付き合いも上手い。だけど、ぼくは違う。

 少し前まで、先輩のストーカーをしていたくらい根暗で、父親にも捨てられてしまうくらい、煩わしい子供なんだから……。

 ……じんわり。涙が溢れてくる。

 先輩の姿どころか、行き交う人も見られなくなってしまった……。

 ドンッ!

「っつ!!」

 立ち往生してしまったから通り過ぎる人と肩がぶつかって、固い地面に倒れてしまう。

「っひ、っふぇ……」

 先輩は……もうぼくを探しにきてもくれない。

「せんぱっ、せんぱ……」

 ひとり、泣いていると……。

「翔夢くん見つけた! 離れてしまってごめんね」

 とっても好きな人の声が頭上から聞こえたかと思ったら、彼はグイッって、ぼくの腕を掴んだ。

「せんぱ……」

 もう、捨てられたのかと思った。

 もう、嫌われたのかと思った。

 だけど、先輩はそうじゃなくて……。

 先輩は、ちゃんとぼくを探しに来てくれた。

 こんなに……こんなにたくさん、人がいるのに……。


「せんぱいぃぃぃ」

「おっと、ごめんね。もう離れないからね」

 人の目があるとか、そういうことも関係なく、ぼくは先輩に飛び込んだ。

 腰に両手を回して、しがみつく。

 そうしたら、先輩の広い背中が、しっとりと濡れていることに気がついた。

 もしかして、ものすごく走ってぼくを探してくれたの?

 先輩……。

「好き。すきぃぃぃ……」

 さっきよりも強く、先輩の腰にしがみつき、告白すると――……。

 ポンポン。

 頭を撫でてくれる先輩の手が優しくて、もっと泣けてくる。

「あっ、あのっ!! 手っ!!」

 ひとしきり泣いたあと。

 ぼくは、先輩に、指と指とを絡むようにして、手を繋がれてます。

「うん? ああ、離れないためにね」

 そうじゃなくって、なんか、この繋ぎ方って、繋ぎ方って!!

「っは、うっ!!」

 どうしよう。先輩とえっちしてないのに、しているみたいに、身体中が熱くなる。

「可愛い」

 クスッて笑う、先輩。

 ぼく、どうしよう。ドキドキするよおおおおおっ!!



 **END**


- 26 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom