chapter:引っ込み思案なぼくの必需品は携帯望遠鏡。 身長は百八十以上はあるだろう、すらりとした身体に、長い手足。すっと通った鼻筋に、二重の目。均衡の取れた顔立ち。襟足よりもやや長めの髪は地毛だろうか、少し茶色がかっている。 王子様みたいな外見。 運動神経抜群で、性格も明るくて気さくな人だ。 対するぼくは色白で、背が低い。 おまけに引っ込み思案な性格だ。 だからかな、ぼくが痴漢に遭うのは……。 あ、なんかちょっと落ち込んできた。 そんなぼくの名前は、真壁 翔夢(まかべ つばさ)。 十六歳。 今は一限目。 ぼくたちは英語の授業なんだけど、担当の先生が風邪をひいてしまってお休みのため、自習。 おかげでぼくたちは、窓からよく見えるグラウンドを覗き込み、体育の授業を受けている憧れの三浦先輩が走る姿を見つめている。 ぼくはチビだから、窓辺で群がるみんなの陰に、すぐ隠れてしまう。 そういう時こそ、この携帯望遠鏡の出番だ!! ガサゴソと通学鞄の中から取り出し、椅子に立って、三浦先輩を眺める。 あ、見つけた。 ジャージ姿の三浦先輩は、風に髪をなびかせ、グラウンドの外周を走っていた。 額には汗をかいているのに、その汗はまるで朝露のようで、ものすごく綺麗だ。 薄い唇が開くその表情も格好いい。 あ、今、額を手で拭った! やっぱり先輩は格好いい。 「あ〜あ、真壁はいいよな、三浦先輩と隣同士でさ」 ふと、ぼくの隣にいた同級生の山本くんがぼやいた。 羨ましそうに言うけれど、ぼくは話したりしないよ? |