chapter:どうしてこうなってしまったのだろう。side:有栖川 霧我 傘を持っていなかった俺と鈴は案の定、雨に打たれて、あっという間に水浸しになった。 そこで俺は、軽はずみな言葉を鈴にかけたのが悪かった。 家が学校から近いからと、鈴を自宅に上げてしまったことが原因だ。 家では普段居るはずの母さんすらもいなかった。 濡れたままでは風邪をひくと思ってクローゼットからバスタオルを取り出し、制服を脱ぐよう、鈴に声をかけたのがいけなかった。 鈴の……裸を見たのがいけなかった。 日焼け知らずの白い肌。 それに、雫がたれた赤茶色の髪は濡れていて、とても綺麗だった。 今、鈴を思い出しただけでも欲しくなってしまう。 マズイマズイと思いながら、本当にマズイのは、こんな俺を知ったら、鈴がどう思うかだ。 キスだっておそらく俺がはじめてなんだ。 それなのに、その先を強請れば、鈴はなんと思うだろうか。 嫌われたくない。 そう思ってした行動が、さっきの跳ね除けるような言い方。 泣きそうな顔をしてここを去ったのを思い出す。 どうすればいいんだろう。 もう、嫌われただろうか。 あんな無理やりなキスをしてしまった俺を嫌うだろうか。 明日、どうやって会えばいい? 「っくっそ!!」 それもこれも、あの紅葉のせいだ!! 紅葉が先に帰ってしまうからこんなことになったんだ。 |