chapter:お願いだから側にいさせてください。side:雨宮 鈴 今朝の、霧我の言葉を聞いてないフリしたら、また一緒にいられる。 笑って、どうしたのって答えればいい。 なのに……端を上げなきゃいけないぼくの口は、下がってしまう。 ここで霧我に嫌われていることを知らないフリしたら、優しい霧我はぼくとまたお付き合いしてくれる。 優しい霧我はそうしてぼくを受け入れ続けてくれる。 この先――霧我に好きな人ができても、断りきれない霧我はずっとぼくの恋人になるんだ……。 「なぁに? 霧我」 ぼくは両手に拳を作って、何も知らなフリ、感じないフリして、にっこり笑って振り返る。 なのに……霧我は……。 悲しそうに眉根を寄せてぼくを見る。 ――ああ、ぼくがそんな顔をさせてるんだ。 こんな表情、見たくない。 霧我はいつだって自信にあふれていて、背筋がシャンと伸びていて、冷静沈着で、けっして物怖じなんかしない。 だけど今は……とても、悲しそうだ。苦しそうだ。 こんな霧我、見たくない。 だけど、それをさせているのは、他でもないぼくだ――。 知らないフリして、優しい霧我を縛り付けたままにしようなんて……ぼくは……。 なんて醜いんだろう。 なんて汚いんだろう。 ぼくの心は、こんなに醜いものだったんだ。 自分ばかりで、霧我のことは一切考えないで……。 だから、だから嫌われちゃうんだ。 「す……」 「お〜い、有栖川!! 助けてくれ」 |