chapter:我慢できなくて。side:有栖川 霧我 「ん、んんっ、ふぁ……」 唇を離して、口角にキスを落とす。 「あっ……」 ガクン。 鈴の膝が力を失った。 これは、俺とのキスが、腰が抜けるほど気持ちよかったということだろうか。 慌てて鈴の腰を支える。 「むが……すき……すき……きらわないで……」 力を失っても、俺の服を握って離さない。 「鈴……嫌わないよ。好きだ、とても……」 「やっ、だめぇっ!!」 チュッ、チュッと、鈴のふっくらとした頬や目じりにリップ音を残し、キスをすると、鈴はイヤイヤと首を振った。 それは、俺のこの欲望を察知してのことだろうか。 眉間に皺が寄っているのが自分でもわかる。 そんな俺の表情で、鈴の弧を描いた眉はまたひしゃげていく。 「むがぁ、ながされちゃダメなのっ!! 好きなの、ぼくだけ……ふぇっ」 流されるとはどういうことだろう? 鈴の言っている意味をきちんと理解しようと、鈴を抱きたいという欲望を押しとどめる。 鈴を椅子に座らせ、俺はひざまずく。 この方が、鈴の表情をずっと見やすい。 「ひっく、ひっく……」 「鈴? 何が流されるんだ?」 両手で目を隠して肩を震わせる鈴。 その震えるような……凍えて死んでしまいそうな姿が見ていられない。 頭を、そっと撫でてやる。 すると鈴は、しゃくりを上げながら呂律が回らない言葉で話していく。 |