chapter:我慢できなくて。side:有栖川 霧我 「むが、すきなひと……いる……」 「?」 好きな人? 「それは鈴のことだろう?」 自分のことなのに、なぜ他人に問わなければならないのか。 鈴のペースにまんまとハマる俺は、もう本当に鈴が好きで仕方がないんだろう。 そう思うと、苦笑を漏らしてしまう。 「ちがうもん、ぼくじゃない!!」 なぜ、そう言い切れるのだろう。 まったくもってわからない。 「鈴?」 「さっき、さっき話してた女の子!! 霧我はあの子が好きなのっ!! ふ……っ、っく……ひっく」 さっき? ああ、あれは……。 「鈴、あの人は俺の親戚」 「へ?」 「親戚。ただの家族ぐるみの友人だ。好きな人じゃない。俺が好きなのは、ただ一人。雨宮 鈴だ」 「でも、あの、だけど……霧我、ぼくと二人きりになりたくないって言ってた」 早朝、ここで紅葉と話していた内容は、やはり聞かれていたのか。 「違う。鈴……俺は……」 「ちがわない、霧我はぼくを嫌ってるっ!!」 どうあっても俺が鈴を嫌うと言いたいのか。 ここまでくると、俺の欲望がどうこうっていうものがどうでもよくなってくるから不思議だ。 ガタンッ! 俺は勢いよく立ち上がり、ブレザーを脱いで机に置く。 俺が突然立ち上がったことで、余計に鈴を怯えさせる原因を作ってしまったようだ。 肩を縮こませ、座っている。 怯えるのなんて、これからだっていうのに……。 |