ねぇ、ギュッてしてよ。
ぼくだって!side:雨宮 鈴





chapter:ぼくだって!side:雨宮 鈴







ズキズキズキズキ、ドクンドクンドクンドクン。


さっき机にぶつけた頭は痛いし、心臓はバクバクうるさい。



それもこれも、『念願が叶うよ』なんて、紅葉が変なこと言うからだ。



たしか、今日の夕方から職員会議だって聞いていたから、保健室には誰もいないと思う。


ということは……だよ?


あわわわわわわっ、ぼく、霧我とふたりきりになっちゃう!!



どうしよう、どうしよう、どうしよう!!



そう考えている間にも、もう保健室着いちゃった。



ガララ……ララガ。


開くドアの音と閉じる音。




トスン。


ぼくを椅子の上に下ろしてくれる霧我。


「さっき机にぶつけた頭、痛いだろう?」

「っふぁあっ!?」

ドッキーン!!



心配そうに顔を近づけて目を合わせてくる。



霧我の長いまつ毛がぼくのまつ毛と触れ合いそうなくらい近い。


たくさんたくさんキスした薄い唇が、ぼくを気遣う言葉を告げる。


身体を硬直させて何も話さないままいると、ぼくが相当痛いのを我慢していると思ったみたい。

背中を向けて高い戸棚を探る。




痛くない。

頭なんて痛くない。



今は……それよりも霧我といることの方が気になって緊張して仕方がないもん。



でも、そんなこと、霧我に言えるわけない。



あわあわ、あわあわ。





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