chapter:限界。side:有栖川 霧我 「ふぇええ……」 保健室で、嫌わないでと泣く鈴を背に、俺は室内ある前後のドアに鍵をかけた。 こうするのは、この場に誰も入れさせないためだ。 いったい鈴は何を思って身体を繋げようとしたのか。 きちんと話を聞いてやらなければならない。 それなのに……俺の欲望は鈴を欲しがり、時間が経つにつれて大きく膨れ上がっていく。 鈴には困る。 いつもそうだ。 態度は物静かで女子と同じか、もしくはそれ以上のしとやかな雰囲気を持つのに、こうと決めたら決意したままに動く。 まあ、それだから余計に可愛いと思うのでもあるが……。 鈴がしようとしていたこと……あれは、鈴の感情がどういうものかということを訊(たず)ねなければ……。 俺に嫌われまいとするような感情であれば、鈴とは繋がることはできない。 だが、もし……鈴が本当に俺を欲しているとしたら……。 「ふぇぇえええっ」 今も嗚咽と共に泣く鈴は、俺を想っていてくれている。 早くなんとかしてあげなければと思うのに、それさえも嬉しく感じるのはいけないことだろうか。 鈴……。 手を伸ばし、泣きじゃくる鈴の冷たい身体を起こしてやる。 「っひ、っくぅ……」 俺が去ったと思ったらしい鈴は、なぜまだここに居るのかと驚いたようだ。 大きな目に涙を流して俺を見つめてくる。 |