ねぇ、ギュッてしてよ。
ずっといっしょ。side:雨宮 鈴





chapter:ずっといっしょ。Side:雨宮 鈴






――もう別れよう。

霧我の足かせにしかならないなら、もう恋人やめよう。



……そう、思った。



そうして霧我の隣には、ぼくよりもずっと相応しい人があらわれる。


だから……あきらめなきゃ。



そう思うのに――……。



ダメなんだ。


霧我のことしか、頭の中になくって――。


家の中にいたハズなのに、いつの間にか着替えて、待ち合わせ場所に向かって走っていた。






霧我は、「ずっと待ってる」と、そう言ってくれた。


日曜日、改札口の前で……。


だけど、待ち合わせよりも2時間オーバー。

きっと、もう霧我は帰ったと思う。


ぼくのこと、すごく怒って……。



きっともう嫌われた。


だから行く理由なんてない。


……なのに、ぼくの意思とは関係なしに走る足――……。



汗をかいてもすぐに冷たい空気で身体が冷える。

つま先はかじかんで、前のめりになって何度もコケそうになる。




そうしてやっと、霧我と待ち合わせた駅を前にして、ぼくの足が止まった。



息苦しくなって、口を開けた。

呼吸して――息を吐くたびに真っ白な息がぼくの口から、ブワって出てくる。



いつもお日様がいる天井は、どんより雪雲になっている。



こんな寒い場所で約束からずいぶん遅れたんだ。


霧我はもう家に帰った。



だから会えない。




そう……思った。





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