chapter:ギュってされて。side:雨宮 鈴 痛む身体にムチを打って、恐る恐る冷や汗をかいている顔を振り向かせると、そこには仁王立ちをした、地獄にいると言われている閻魔(えんま)様よりも恐ろしい表情をしたお姉ちゃんがいた。 自分の声とドアを開ける音の方がよっぽどうるさいっていうことには気づかないんだろうか。 でも、そんなことは言えない。 言ったら最後、ぼくは……お姉ちゃんに殺される。 外見はとても穏やかそうで優しい雰囲気をしているし、腰まであるゆるやかなカーブをつくった長い黒髪は、可愛い雰囲気を漂わせる。 それに加えて、長いまつ毛に大きい目。 これは間違いなく可愛い系の女子。 だけど、その実態は、見るも恐ろしい閻魔の顔を持つお姉ちゃんだ。 昔、ぼくはさんざんお姉ちゃんに泣かされたんだ。 「なに? 鈴、何か言いたそうね」 お姉ちゃんは口角を上げてニヤリと笑う。 こ、こわい。 ぼくは身体が痛いのも我慢して首を大きく左右に振る。 「なんでもないよ」 「だったら言うとおりにして」 「……はい」 悲しいかな、ぼくはお姉ちゃんに何一つとして意見を言えない。 そんなお姉ちゃんが何も言えない人物がいる。 それが、霧我。 霧我のカッコよさは、そこでも万能に果たす。 気が強いお姉ちゃんでも、さすがの霧我相手だと何も言わない。 それどころか、霧我にアレコレと世話を焼く。 |