ねぇ、ギュッてしてよ。
さよならなんて言わせない。Side:有栖川 霧我





chapter:さよならなんて言わせない。Side:有栖川 霧我





もう……嫌われただろうか。

ここへ来た当初の決意は寒さでへし折れてしまった。


鈴――……。


「む……が?」


「!!」

俺を呼ぶ声が頭上から聞こえたような気がして俯(うつむ)けた顔を上げる。


そうして見えるのは……。




「どうして……? なんでまだいるの?」



眉を下げて困っているような彼の顔――。


揺れている茶色い瞳。


小さな肩を揺らして、膨れた唇が大きく呼吸する。


マフラーも首に巻かず、上着だけを羽織って立ち尽くしている鈴の姿。



――急いで走って来てくれたのだろうか……。




「ぼく、言ったよね? バイバイって……」

震える唇が、静かに怒っている。




――ああ、言われた。

だが――……。


「俺は認めていない」


立ち上がり、華奢な身体に手を伸ばす。


昨日のようには振りほどかれはしなかった。


そうして死角になっている柱の後ろで、抱きしめる。



「むが……むっんっ!!」

不機嫌そうに口角を下げた、ふっくらとした唇を奪う。



「ん、んっ……」


他人の目などどうでもいい。



鈴……。

「好きだ……」


貪る口を離し、そっと囁くように告げると、細い腕が俺の背中に巻き付く。



――鈴。





――――。



「ぼく、もう霧我の隣にいない方がいいと思ったんだ」



無事に鈴と待ち合わせができた俺は、人が多い南駅から、少し薄暗い、人気のない夜の公園に移動した。





- 78 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom