chapter:身体、重ねて。Side:雨宮 鈴 だけど霧我は、今雨傘を買った。 「はい鈴(すず)、これで濡れなくて済む」 霧我の気遣い。 それはとっても優しいもの。 でも、でもね。 少しくらい、「これからどうしようか」とか言ってほしかった。 むぅ。 お店を出たところで、ぼくはひねくれて霧我を睨(にら)む。 「鈴? どうしたんだ?」 わかってない。 霧我はぼくの気持ちをぜんっぜん、わかってくれてない!! せっかくせっかくデートの日なのに。 しかもしかも、雨降ってるのに!! 「鈴? いったい何を怒っているんだ?」 ほんとにわかってくれてない! 鈍感で優しい霧我。 だからぼくは、歩き出す霧我の裾を小さくクイッと引っ張った。 でも、だけど。 なんて言えばいいのかな。 もしかすると霧我は、今日はもうぼくと一緒にいるの、疲れたのかもしれない。 ぼくだけが……もう少し霧我と一緒にいたいって思ってるのかもしれない。 ワガママ、言うの止めようと、さっき誓ったばっかりなのに、もう誓いを破ってしまう。 ――ダメ、だよね。 やっぱり。 ワガママ、言っちゃいけないよね。 「ううん、ごめんなさい。なんでもない……」 ぼくはうつむいた顔を上げて、眉間に皺を寄せて困っている霧我に笑いかけた。 「鈴? 言いたいことがあるなら言ってほしい。俺は鈴の言いたいことが聞きたい」 |