chapter:身体、重ねて。Side:雨宮 鈴 ……ううっ。 霧我は優しい。 とっても、とってもとっても。 だけど、同時に霧我はとってもとっても、と〜っても頑固さんなんだ。 ぼくが言うまで、きっと霧我はココを動かない。 だって、霧我はぼくの顔をじいっと見つめたまま、微動だにしないんだもん。 だからぼくは、ゆくり口を開けた。 「ぼく、まだ帰りたくない……」 ぽつり。 告げた本音。 ワガママ。 霧我がなんて言うか知りたくて、顔を見つめれば、逸(そ)らされた。 ……やっぱり、ウザいって思われた? 霧我、ぼくを嫌う? ぼく、嫌われちゃう? 「……っつ」 イヤ、イヤだ。 嫌われたくない。 イヤだよ……。 視界がグニャって曲がってきて、霧我の顔が見れない。 鼻の奥がツンとして……ダメ。 嫌われるって思ったら悲しくて泣きそうになる。 胸が……痛いよ……。 そっぽを向いている霧我が、いったいどんな表情をしているのか知ることができない。 「ごめっ、ごめんなさい!! あのっ、霧我。ぼくいいから、あの、駅に行こう!!」 ジクジク、ジクジク痛む胸。 ぼくは握っていた霧我の裾を離して、傘のヒモを解いた。 滲んだ視界をどうにかしようと目をゴシゴシ擦って、霧我の前に出るぼく。 だけど、霧我は全然動く気配がない。 |