chapter:溺愛 side:陽生 先月、俺の父親が再婚し、俺に弟ができた。 弟の名前は晃太(こうた)。二重の大きな目は真っ直ぐで綺麗だ。黒髪は艶やかで、背は年頃の男の子よりも少し低い。その姿と相俟って、とても愛らしい。俺よりも五歳年下の中学生だ。 俺は義理の弟に恋をしている。 「兄さん」 俺の機嫌を窺うように上目遣いになる大きな目も。 にっこり笑えば、赤く染まる頬も。 すべてが愛らしい。 その晃太は寝付きが悪いらしく、俺の部屋にやって来る。 今だって、大きな目を潤ませて枕を抱きしめて俺の前に立っている。 もう、本当に可愛いなあ。 縮こまっている晃太の背中をそっと引き寄せ、中に入れてやると、嬉しそうに笑う。 「兄さん、好き」 頬を赤らめてそう言う晃太は、おそらく本人は、『好き』を『恋愛』と結びつけていないのだろう。 俺が晃太を抱いた少し前までは……。 以前なら、躊躇(ためら)いがちだった晃太は、今では俺に擦り寄ってくる。 リップ音が鳴ったと同時に、晃太の唇が俺の唇に触れた。 晃太が俺にキスを仕掛けてきたんだ。 それは二日前。 俺が初めて晃太を抱いた時、最終的には快楽を与えたものの、あまりの痛みに耐えきれず、痛いと泣きじゃくった晃太があまりにも苦しそうで。 できるだけ辛い思いをさせたくはないから、抱きたいという少し我慢していたのに、こうして晃太は俺を挑発してくる。 「晃太」 腕の中にいる彼の名を呼んでも返事はない。 様子を窺ってみると、可愛らしい寝息が聞こえた。 目を閉ざし、小さな唇が弧を描いている。 どうやら晃太はもう眠ってしまったらしい。 困ったな……。 どうしようか。 そうして今日も、俺は幸せな苦痛に耐える。 **END** |