chapter:やっぱり貴方が好き。 side:流星 ※r18 絃(いと)さんはやっぱり凄い人だった。俺を膝に乗せたまま、一時間も経たないうちに連載分を書き上げてしまった。 その間、俺は何をしていたかっていうと、画面上で組まれていく文字の羅列を目で追いながら、絃さんの吐息を感じてドキっとしたり、長い指の動きに見とれたりで、心ここにあらずって感じ。 ……なんだ、俺。絃さんが同性でも結構気にしてないじゃん。 それはきっと、見た目じゃなくて、絃さんの中身に惚れたんだ。 ――とはいえ、絃さんは男のままの姿でも、やっぱりすごく綺麗だけどね。 それで無事に作品を書き上げた絃さんは、担当編集者に無言で原稿を渡し終えた。 担当の人はとても苦労したみたいで、感激の涙を流しながら、何度もお礼を言って帰って行った。 二人きりになった俺たちはっていうと、恋人なんだもん。することは決まっている。 俺はすぐに絃さんによって、畳の上に押し倒された。 「い、と、さ……」 震えるこの強請るような甘い声は誰のものだろう。いつもの俺じゃない。 シャツに付いていた前ボタンを外され、上半身がはだけている。胸にあるふたつのそこに、さっきまでキーボードを叩いていた長い指が触れ、もう一方は薄い唇に含まれた。 静寂が広がるこの空間で、乳首を吸われる音が妙にリアルに耳へと入ってきて、真っ昼間から淫らな行為をしているんだっていうことが生々しく感じる。 自分のおかしな声も、こうやって組み敷かれる姿も恥ずかしくて、無言なんて耐えられない。 「乳首、舐めておいしい?」 気恥ずかしい気持ちをなんとかしたくて訊ねれば、薄い唇がほんの少し、俺の乳首から離れた。 「美味しいというか、反応があって可愛い。ここ、ツンと尖ってきた」 絃さんはひどい。 恥ずかしいのをなんとかしたかったのに、そんなことを言われてしまえば余計に羞恥が増す。 「んっ、それは、絃さんが舐めるから……」 って、俺も律儀に答えるなよっ!! 自分に突っ込みを入れてしまう間にも、絃さんはまたさっきの作業に戻ってしまった。 片方の乳首はクリクリとこね回され、もう片方は舌先で転がされ、吸われる。 舐めてるその表情がすごくエロくて、男の色香を感じてしまう。 「はっ……絃さん、俺っ!」 絃さんと淫らな行為をしていると思うと、下半身が疼く。 腰を揺らせば、俺の気持ちに気付いたみたいだ。彼はゆっくり頭を上げた。 「ああ、そうか。ずっとお預けだったもんな」 そう言うと、絃さんは俺の足から下着ごとズボンを抜き取った。 「勃ってる。俺で感じたの?」 「好きな人なら、当然だと思う」 真面目に答えたら、普段、キリッとした絃さんの表情が変化した。口元を腕で隠し、俯いたけど、耳まで真っ赤だ。 年上の人に言うのもおかしいんだけど、すごく可愛い。 今までにない絃さんを新たに発見してしまった。 「そういうことを平然と言える流星(りゅうせい)はすごいと思うよ」 絃さんはそう言うと、俺の勃ち上がりはじめた一物を空いているもう片方の手で包み込んだ。 「っ、あっ!」 途端に、新たな刺激が俺の身体を駆け巡る。 腰が浮いた。 「可愛い声。もっと聞かせて?」 大きな手が、俺の一物をこね回す。 絃さんの手が動くたび、少しずつ、水音が混じってきた。 「いとさん、俺、おれっ!!」 どうしよう、吐精したいかも……。 「イきたいんだろう? いいよ」 絃さんは簡単に言ってのける。 だけどさ、俺は嫌だ。 「やっ、だって俺、絃さんと一緒が良いっ!」 本音を告げれば、細い目が大きく見開いた。 その後、フッて目元が緩む。 すっごい優しい笑顔だった。 「可愛いことを言うな。一緒にっていうのがどういう意味なのかわかっているのか?」 だけどそれもほんの一瞬だ。瞳孔は開ききって、瞳は光を宿している。訊ねる絃さんの顔は、肉食獣のような雄の顔に変化していた。 「……たぶん。でも怖くない」 今の絃さんを見ても、怖くない。 だからきっと、そういうことだよね。 「怖くなったら言え、すぐに止める」 なっても止めてほしくない。 だけどそれをわかってくれそうにないから、俺はただコクンと頷いた。 俺は両足を大きく開き、絃さんを受け入れる準備をする。 そうすると、俺の先走りを纏った絃さんの骨張った長い指を、排泄をするばかりの後ろの孔へ挿し込んだ。 俺の中で、絃さんの指が動く。 「んっ」 異物感が半端ない。 痛いなんてそんなものじゃなくて、鋭い切っ先で身を引き裂かれるみたいだ。 指だけでも痛いのに、こんなんじゃ、絃さんなんて挿入(はい)ってこれるわけがない。 それでも、指が中で解されれば、少しずつ柔らかくなっていくのが自分でもわかる。 初めよりはまだマシだったけど、やっぱり痛いものは痛い。必死に唇を噛みしめ、痛みを口に出さないようにする。 だって少しでも痛いって言ったら、絃さんはきっともう、俺に手を出さないと思ったんだ。 絃さんが他の奴を抱いたらどうしよう。 俺の方がずっとずっと絃さんを好きなのに、俺じゃない人に手を出して、それでこの関係が終わったら? それを思うだけでも嫉妬で狂いそうだ。 「そんなに噛みしめたら、血が出るぞ?」 だけどやっぱり絃さんだ。俺の感情をとっくに見抜いていた。 噛みしめている口を、薄い唇が塞いできた。 「んっ、っふ……」 中を弄られながらキスされるのって、なんかすごく……エロい。 想像したら、今までよりもずっとおかしな気分になる。 おかげで余計な力が抜けていく……。 口は塞がれていて何も言えないから、俺は身体をくねらせ、絃さんが欲しいと示した。 指が引き抜かれ、少し寂しくなる俺の秘部は、だけどすぐに、指よりも硬いものが触れた。 「っひ!!」 怖い。だけど絃さんなら大丈夫。 自分に言い聞かせ、両足を絃さんの腰に絡めた。 「流星は見た目ゴールデンレトリバーみたいに人懐っこいのに、意外と頑固だな」 クスリと笑う吐息がこそばゆい。 「快楽にだけ身を委ねろ」 絃さんはそう言うけど、そんなのムリ!! 「んっ、つあああっ!」 絃さんの一物は指よりもずっとずっと太いし、すごく硬い。痛くて死にそうだ。とても苦しい。 中を掻き分け、ゆっくり挿入される一物に、身体が強ばり、足が震える。 だけどそれも絃さんの前に回った手のおかげで消えていった……。 俺の一物が、ふたたび大きな手に包まれたんだ。 「全部挿入ったよ、流星」 「ん……」 俺の勃ち上がった一物の下にあるのは、尻の孔を貫く、俺の一物と同じ形をした絃さんの雄だ。 頬を伝う涙は、いったい何の涙だろう。 絃さんに抱かれた嬉しいっていう気持ちとか、同性に抱かれたっていう気持ち。それに痛み。 もうごちゃ混ぜになって、何が何だかわからない。 薄い唇が、溢れ出た涙を吸い上げる。 絃さん、俺。やっぱり貴方が好きだ。 背中から後頭部に腕を回し、口づけを強請った。 深くなる口づけと、絡み合う舌。俺の口の端に伝うのは、いったいどっちの唾液だろう。 「……っふ」 絃さんの熱い楔に貫かれ、痛みはもうない。 中が蕩けてしまいそうだ。 ……俺、消えてなくなってもいいや。 俺は絃さんに身を委ねる。だけど吐精してしまうのがもったいなくて、長い時間、互いに貪りあった。 **END** |