れんやのたんぺんしゅ〜★
押しに押されて流されて





chapter:やっぱり押しに押されて流されて







「ねぇ、小賀(こが)くん。生徒会長と恋仲になったってほんとう?」

「えっ?」

 学校に登校するなり、俺は突然下駄箱のところで、クラスメイトの女子に訊(たず)ねられた。



 生徒会長っていうのは、三年の飛鳥 縁(あすか えにし)さんだ。とてもカッコイイので有名で、女子たちからは憧れの的だ。

 その彼に恋心を打ち明けられたのは昨日のこと。

 昼休憩の時、会長に呼び出され、俺と恋人になったと告げられた。それというのも、新聞部に俺への気持ちがバレたからだとか……。

 振られたというのは世間体が悪いから、付き合うことになったと言われた。

 俺の同意もなしに。


 もちろん、俺は会長の恋人宣言を承諾していない。

 ……ハズ、だったのに……。


 なんでだ? なんでこうなった?

 俺そっちのけで恋人になってるの?



「何で……」

「そんなこと知ってるのかって? 新聞部が記事にしてるし、親衛隊だって貴方を守るよう動いてるわよ?」


 ぽつんと呟けば、女子は腰に両手を当てて挑むように見つめてくる。


「付き合ってることを秘密にするなんて、ひどいじゃない!」

 いつの間にか俺は女子たちに囲まれていた。


 うわっ、やべ。

 これはまさかの展開!

 俺、女子にシめられるのか?

 身の危険を感じて、女子たちから後ずされば……。


「本当よ!! こんな萌え、なかなかないわ!!」

 えっ?

 おかしな言葉を彼女たちから聞いた。

 目を瞬かせていると、また違う女子も仲間に加わり、口を開く。


「と、いうことで。これから貴方の追っかけさせてもらうからよろしく」


 えっ?

 シめられることはなんとか難を逃れられたものの、ある意味怖い。

 ゆっくり、ゆっくり……。

 少しずつ後ずさり……。



 恐怖が込み上げてきて、俺は女子の群れをはね除け、走る。


「あっ、逃げた!」

「逃がさないわよ! 生徒会長とのラブラブっぷりをこの目で見るそのためにっ!!」



 冗談だろ、なんだよコレ!!



「っは、っは……」

 どこに向かって走っているのかはわからない。

 だけど止まるのは自殺行為だ。身の危険が差し迫っている。


「あ、ねぇ、小賀くん!!」

 なおも追いかけてくる女子たちから逃げていると、新たな女子が参戦してくる。


 またかよチクショー!!


 朝っぱらから女子の群れに逃げる俺。

 予鈴のチャイムすらまだ鳴らない。

 こんな時に限ってなんで時間が過ぎるの遅いんだよチクショー!!


 ――なんて思っても、やっぱりどうにもならなくて、だけどひたすら校内を走る俺の体力は限界を迎える。


 ぜぇぜぇと息を切らし、どこか逃げられる場所を探していると、曲がり角のある一角にある教室。

 そこからにっこり微笑み手招きをしている人物が見えた。


「うわああん、もういやだあああっ!!」

 あまりにも取り乱していたからだと思う。俺はすかさず手招きした彼に飛びついた。

 彼の手が俺の腰に回る。

 同時に、俺の視界は天地が逆さになった。


「今日はやけに積極的だね」


 微笑みを崩さず、俺を組み敷くのは、イケメン生徒会長。飛鳥 縁さんだ。


 えっ?

「っち、ちがっ!!」

 会長の姿を見て、やっと女子たちから逃れられると思ったからであって、別に会長に会いたくて抱きついたわけじゃない。

 それなのに、今の状況は何も言い返すことができない。


 しどろもどろになっていると、ドタドタと複数の足音が迫ってくる。


「ここにいるんでしょう? 小賀くんっ!!」

「逃がさないわよ!!」


 挑戦的な甲高い声が聞こえた直後、目の端でドアが開けられたのが見えた。


 そして俺の今の状況は……。

 マズい。

 すっげぇマズい!!

 だって俺、今、生徒会長に押さえ込まれてる!

 これじゃあ、恋人じゃないって反論をするどころじゃない!!


 焦っていると、案の定、勘違いをした女子たちから黄色い歓声がわき上がった。


「きゃーっ! 会長が小賀くんを押し倒してるっ!!」


 女子たちの黄色い悲鳴と共にカメラを向けられ、真っ白な光が放たれる。

 眩しい。

 っていうか、ちょっと待て!!

 なんでこんな際どいポーズで写真とられんの?


 俺、まだ会長に恋人になることを了承してねぇのにっ!!


「ちょっと、なんでこうなるんだよおおおっ!!」


 その日の新聞部の記事の一面は、もちろん生徒会長に組み敷かれている俺の、ツーショットだったことは言うまでもない。



 **Fin ?**


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