chapter:やっぱり押しに押されて流されて 「ねぇ、小賀(こが)くん。生徒会長と恋仲になったってほんとう?」 「えっ?」 学校に登校するなり、俺は突然下駄箱のところで、クラスメイトの女子に訊(たず)ねられた。 生徒会長っていうのは、三年の飛鳥 縁(あすか えにし)さんだ。とてもカッコイイので有名で、女子たちからは憧れの的だ。 その彼に恋心を打ち明けられたのは昨日のこと。 昼休憩の時、会長に呼び出され、俺と恋人になったと告げられた。それというのも、新聞部に俺への気持ちがバレたからだとか……。 振られたというのは世間体が悪いから、付き合うことになったと言われた。 俺の同意もなしに。 もちろん、俺は会長の恋人宣言を承諾していない。 ……ハズ、だったのに……。 なんでだ? なんでこうなった? 俺そっちのけで恋人になってるの? 「何で……」 「そんなこと知ってるのかって? 新聞部が記事にしてるし、親衛隊だって貴方を守るよう動いてるわよ?」 ぽつんと呟けば、女子は腰に両手を当てて挑むように見つめてくる。 「付き合ってることを秘密にするなんて、ひどいじゃない!」 いつの間にか俺は女子たちに囲まれていた。 うわっ、やべ。 これはまさかの展開! 俺、女子にシめられるのか? 身の危険を感じて、女子たちから後ずされば……。 「本当よ!! こんな萌え、なかなかないわ!!」 えっ? おかしな言葉を彼女たちから聞いた。 目を瞬かせていると、また違う女子も仲間に加わり、口を開く。 「と、いうことで。これから貴方の追っかけさせてもらうからよろしく」 えっ? シめられることはなんとか難を逃れられたものの、ある意味怖い。 ゆっくり、ゆっくり……。 少しずつ後ずさり……。 恐怖が込み上げてきて、俺は女子の群れをはね除け、走る。 「あっ、逃げた!」 「逃がさないわよ! 生徒会長とのラブラブっぷりをこの目で見るそのためにっ!!」 冗談だろ、なんだよコレ!! 「っは、っは……」 どこに向かって走っているのかはわからない。 だけど止まるのは自殺行為だ。身の危険が差し迫っている。 「あ、ねぇ、小賀くん!!」 なおも追いかけてくる女子たちから逃げていると、新たな女子が参戦してくる。 またかよチクショー!! 朝っぱらから女子の群れに逃げる俺。 予鈴のチャイムすらまだ鳴らない。 こんな時に限ってなんで時間が過ぎるの遅いんだよチクショー!! ――なんて思っても、やっぱりどうにもならなくて、だけどひたすら校内を走る俺の体力は限界を迎える。 ぜぇぜぇと息を切らし、どこか逃げられる場所を探していると、曲がり角のある一角にある教室。 そこからにっこり微笑み手招きをしている人物が見えた。 「うわああん、もういやだあああっ!!」 あまりにも取り乱していたからだと思う。俺はすかさず手招きした彼に飛びついた。 彼の手が俺の腰に回る。 同時に、俺の視界は天地が逆さになった。 「今日はやけに積極的だね」 微笑みを崩さず、俺を組み敷くのは、イケメン生徒会長。飛鳥 縁さんだ。 えっ? 「っち、ちがっ!!」 会長の姿を見て、やっと女子たちから逃れられると思ったからであって、別に会長に会いたくて抱きついたわけじゃない。 それなのに、今の状況は何も言い返すことができない。 しどろもどろになっていると、ドタドタと複数の足音が迫ってくる。 「ここにいるんでしょう? 小賀くんっ!!」 「逃がさないわよ!!」 挑戦的な甲高い声が聞こえた直後、目の端でドアが開けられたのが見えた。 そして俺の今の状況は……。 マズい。 すっげぇマズい!! だって俺、今、生徒会長に押さえ込まれてる! これじゃあ、恋人じゃないって反論をするどころじゃない!! 焦っていると、案の定、勘違いをした女子たちから黄色い歓声がわき上がった。 「きゃーっ! 会長が小賀くんを押し倒してるっ!!」 女子たちの黄色い悲鳴と共にカメラを向けられ、真っ白な光が放たれる。 眩しい。 っていうか、ちょっと待て!! なんでこんな際どいポーズで写真とられんの? 俺、まだ会長に恋人になることを了承してねぇのにっ!! 「ちょっと、なんでこうなるんだよおおおっ!!」 その日の新聞部の記事の一面は、もちろん生徒会長に組み敷かれている俺の、ツーショットだったことは言うまでもない。 **Fin ?** |