chapter:なけなしの恋~不完全な彼 side:七瀬 筑紫 ※r18 僕には好きな人がいる。その人の名前は志摩 悠騎(しま はるき)。僕とは同じクラスで、背が高くてすらっとしたモデルさんみたいな体型に、象牙色の肌と対照的な、襟足までの漆黒の髪が印象的。睫毛は長くて目は切れ長。高い鼻梁。大学生にも見えちゃうくらい、落ち着いた雰囲気のその人。 だけど完璧なのは容姿だけじゃない。頭も良くて運動神経もすごくいい、とっても格好いい人だ。 対する僕はチビで、いまだに中学生に間違われるくらい、童顔だ。彼とは同じ性別なのに全然違う。 僕たちが通う高校は男子校で、異性がいない分、同性の恋人がいてもおかしくない。 格好いい彼はみんなの憧れの的だ。 だけど恋愛の神様はやっぱり残酷だ。僕から一生懸命話しかけ、誰にも取られたくなくて、友達から恋人に昇格したのは一ヶ月前。 そして一ヶ月が過ぎた今日。あんなに一生懸命アプローチしたのに、好きな人ができたからと、彼に振られてしまった。 いつか……。 いつかこういう日が来ると思っていた。 何でも完璧にこなす彼は、僕なんかじゃ役不足なんだ。だって相手の人、すごく綺麗だった。チビな僕とは月とすっぽん。雲泥の差がありすぎる。 なにせ僕は、悠騎とキスさえしたことがない。それは、悠騎にとって、僕はそういう対象には見られていない証拠だ。 もしかしたら、告白を受け入れてくれたのも友達としてで、僕に哀れみをもったからなのかもしれない。 けっして叶わない恋を思い知れば、涙が溢れてくる。 「ふえっ……」 僕は家に帰ってくるなり自分の部屋に閉じこもり、ベッドに倒れ込む。 悠騎に振られたと女々しく泣きじゃくる。 彼には綺麗な恋人がいる。だけど、どんなに諦めようとしても、やっぱり悠騎への恋を諦めることができない。だから明くる日、二番目でもいいからと悠騎にお願いをしに行った。 悠騎はきっと、いい加減にしろと怒るに違いない。もしかすると、昨日の恋人さんと一緒にいるかもしれない。 覚悟して悠騎の家に行くと、幸いにも、彼は恋人さんと一緒じゃなかった。 お別れは嫌だと言った僕。 だけど彼の言葉は僕が予想していたものとは違っていたんだ。 彼はエナジーを吸うヴァンパイアらしい。彼はなんでも、僕のエナジーを吸い取っていたんだとか――。 なぜそう簡単に自分の言うことを信じるのかと訊(たず)ねられたけど、悠騎はとても日本人離れをした顔立ちをしているから、なんとなく心の奥底で感じ取っていたのかもしれない。悠騎がヴァンパイアだということをすんなり受け入れることができた。 それでも、彼が僕の体調に影響を及ぼしているということは考えられない。 たしかにね、最近目眩とかよくあるけれど、でも、それは悠騎と両想いになれて興奮して眠れなかったりしていたからだと思っていた。 「やはり、別れよう」 そう言う悠騎の苦しそうな顔が、さっきまでの僕の気持ちと同じなんだと訴えてくる。 悠騎が何者だってかまわないよ。だって僕、すごく好きなんだもん。 だから僕は首を横に振り続け、悠騎の傍にいたいと言い続けた。 初めてだから怖いけど、悠騎に抱かれるのもかまわない。 悠騎が、好きだから……。むしろ抱かれたいと思っている。 それなのに、なんで? 悠騎は僕を抱かなかった。 お別れされなくて嬉しかったけれど、悠騎にとって、やっぱり僕はそういう対象として見てくれないと思うと、悲しい。 だから、翌週の土曜日。今日は僕から悠騎を誘うことにした。 それでもって、悠騎にも気持ち良くなってもらうんだ。 やり方はネットで調べたから大丈夫。 多分、体格からいって、僕は抱かれる方になるだろう。同性を受け入れるのはとても苦しいらしいけれど、それでも悠騎が好きだから、セックスだってしたい。抱かれたっていい。 健全な年頃の男子なら、好きな人とセックスしたいって思うのは当然だよね? 土曜日は、僕の両親は共働きをしているから、夜八時以降にならないと帰ってこない。今日がまたとないチャンスだ。 時刻はお昼少し前。悠騎は十一時に来ることになっている。 お風呂には入ったし、悠騎を迎え入れる秘部もきちんと解した。通販で買った潤滑剤も塗っている。 秘部がネチネチしてちょっと気持ち悪いけど、大丈夫。いつだって悠騎に抱かれる準備はできている。 ピンポン。 玄関からチャイム音がして、悠騎を迎え入れる。 悠騎の今日の服装はグレーのシャツにデニムパンツ姿。どこにでもある服装なのに、モデルさんみたいだ。悠騎はやっぱり格好いい。 「いらっしゃい。入って入って」 悠騎の背中を押して部屋の中に招き入れた。 「何か飲む? 烏龍茶があったと思うんだ」 「ああ、ありがとう」 そう言った悠騎の眉間には皺が寄っている。 悠騎? なんだか少し苦しそうなのはどうしてかな? 「悠騎?」 悠騎に近づき、首を傾げると、骨張った指が僕の顎を捕らえた。 「筑紫、お前。何かしたのか?」 「えっ? なにが?」 訊ねられてドキッとした。 まさか悠騎に抱かれる準備をしているということを言える筈もなく、しらばっくれる。 すると悠騎は屈んで、僕の耳のすぐ傍に薄い唇を寄せた。 「いつにも増して甘い匂いがする」 恥ずかしくて顔を俯け、だけど悠騎が気になって上目遣いで見てみると、彼の眉間には深い皺が刻まれていた。 「……外に出よう」 「えっ?」 なんで? ダメだよ。そうしたら、悠騎に抱かれるっていう僕の決意が水の泡になっちゃう。 「悠騎!!」 焦った僕は背伸びして、悠騎の唇を奪った。 自分からのキスは、すぐに逆転して悠騎のものになった。 「ん、っふ……」 開いた唇から、悠騎の舌が滑り込んでくる。 悠騎、悠騎……。 彼を想えば想うほど、恋心は募っていく。 「んっ、っふ、んぅ……」 背中に腕を回し、しがみつけば、悠騎の手が僕の背中を伝って腰を撫で、下着を通る。そうして彼の指は、悠騎を迎え入れるための密口に辿り着いた。 「ん……」 ビクンと腰が跳ねる。 「解したのか? ここ、柔らかい……」 ……ツプ。 指が入ってきた。 中を掻き混ぜられれば、潤滑剤が淫らな音を弾き出す。 僕、おかしいよ。自分で入れた時は痛みと不快感しかなかったのに、悠騎だと、胸が締めつけられて、自分自身が熱をもっていくのがわかる。 「っひ!!」 「ここ、感じるだろう?」 「えっ、あっ、あああっ!! はるきっ!!」 ある一点を指が触れた瞬間、僕の中にある何かが弾ける。 腰が砕けると、お姫様抱っこをされてベッドまで運ばれた。 「たっぷり可愛がってあげよう」 「あっ、っひ、やっ、らめっ!! あううっ!!」 横目で彼を見ると、口角が上がり、とても楽しそうだ。僕の中の一点ばかりを執拗に擦ってくる。 おかげで僕は口を閉ざすことができず、喘ぎっぱなしだ。 下半身が痺れてきて、苦しい。膨らみはじめている僕自身を覆っているズボンが邪魔だ。太腿がべとべとしていて気持ち悪い。先走りがたくさん流れているんだ。 「やああん、はるきっ! はるき、好き……」 募る思いを口にした瞬間、僕は仰向けにされていて、下着ごとズボンを下ろされ、下肢があらわになっている。 見えるのは、先走りを垂れ流している高く反り上がった自分のもの。 悠騎はデニムパンツから僕と同じ一物を取り出した。僕よりもずっと太くてたくましい。 本当にアレが入るのかと思えば、ちょっぴり怖いと思ってしまう。 内壁を掻き分け、悠騎の肉棒が僕を貫く。 ギュッと目を閉ざし、内壁を引き裂かれる痛みと闘っていると、だけど途中で痛みが消えた。代わりに、さっきまであった快楽が呼び覚まされる。 どうしよう、背中がゾクゾクする。 何かが僕の中を駆け巡った。 嘘、うそうそうそっ!! 初めてなのに、悠騎に貫かれて感じるなんて!! 僕の中にある悠騎は内壁を擦る。その度に、僕の中で水音が弾き出される。 「き、もち……っひぃいいいんっ!」 たくさん擦られて気持ち良くて、僕も腰を揺らす。 先走りが僕の陰茎を伝い、太腿を濡らしていく……。 「いけない子だな、こんなにお漏らしして……」 「っひ、うっ」 やだ、そんなこと言わないで、余計に感じちゃう!! 悠騎の肉棒が僕の内壁を擦る。 「たっぷり注いでやろう」 耳元で囁く彼の低い声が、さらなる快楽を煽ってくる。 僕は中にある悠騎を締めつけ、悠騎は僕のお腹の奥に精が注がれる。 「あっ、ひいいいいんっ!!」 気持ちが良いよ。悠騎、悠騎。 「もっと、ちょうだいっ、はるきぃいいっ」 僕は腰を揺らし、悠騎を欲っして何度も強請った。 「……すまない。自制していたのに、まさかまた暴走するなんて……」 うう。身体が怠すぎて動けない。 あれから悠騎に何度もイかされ、僕はベッドにうつ伏せになったまま寝転んでいる。 端っこの方で項垂れているのは、本当にいつもクールな悠騎だろうか。なんだか大きなわんこに見える。 セックス経験がないのにかかわらず、アナルセックスで感じたのは、悠騎がエナジーを僕に注いで快楽を与えたのだとか。 調子に乗ってセックスをした結果、僕は動けない状態まで追い込まれてしまったらしい。 そこまでして僕を欲しがってくれたというのは嬉しい。 完璧に見えても完璧じゃない悠騎がいる。それを知っているのが僕だけで嬉しい。 「悠騎なら、かまわないよ?」 にっこり微笑めば、彼は大きな手で僕の頭を撫でた。 その撫で方がとても優しくて心地良い。うっとりしてしまう。 「もう昼だな。何か食べやすいものを作ろう。冷蔵庫の食材、少し借りるぞ?」 悠騎はためらいなくそう言った。 ……訂正。やっぱり悠騎は料理もできる完璧な人だ。 **END** |