れんやのたんぺんしゅ〜★
身代わり。 ※r18





chapter:身代わり。







「っひ、あっ、ああっ!」

 室内には俺の悲鳴と、それから俺を組み敷く男の声。それから、ぶつかり合う肌の音と淫猥な水音ばかりだ。

 白い肌、華奢な身体には不似合いの、長い前髪から覗く黒い目は、まるで獰猛な肉食獣だ。

 俺、名取 相太(なとり そうた)は、同じクラスの高橋 海匡(たかはし うきょう)に尻の孔を掘られ、強姦まがいなことをされている。

 何で俺、こんなことになってるんだろう。


 事の発端は、俺を組み敷く此奴が不登校になり、先生の言いつけで訪問したことにある。

 

 俺の姿を見るなり盛ってきて、気が付いたらベッドの上に押し倒され、この様だ。

 肉棒を貫かれている尻の孔が痛い。

「っひ、っぐ」

 苦しくて息ができない。

 俺の目から流れるのは、いったい何の涙だろう。

 苦しみに悶えていると、高橋の細い腕が前に伸びてきた。俺の陰茎に触れる。

「っひ、触んなっ、やだあっ!!」

 苦しみだけでいい。快楽なんていらない。

 だって俺は此奴に強姦をされてるんだ。悦になんて浸らない。浸りたくない。

 それなのに、高橋は俺の陰茎を擦り、快楽を与えてくる。

「ひぃう、ああっ」

 初めて他人に陰茎を触れられ、自分でするよりもずっと気持ち良い。

 腰は揺れてしまう。

 そうしたら、高橋の肉棒が俺のある一点に触れた。

 途端に俺は言い知れない強い刺激に襲われた。

 それを知ったのか、高橋は自らの肉棒でそこばかりを執拗に攻めてくる。

「っひ、そこ、イヤだっ、擦らないでっ! イ、ぐっ、イぐ、ううっ!!」

 最奥に押し込められ、高橋の白濁が注ぎ込まれる。

 その快楽に飲み込まれ、俺も吐精した。高橋の手の中で……。




「ごめんっ、あの、タオル、持ってくる」

 一通り俺を抱き終えた高橋は、震える声でそう言うと、部屋を出て行った。

 シン、と静まりかえった部屋に、取り残された俺。

 初めは拒絶こそあったものの、途中からは高橋のペースにのまれて、散々喘ぎまくって、注がれて感じたなんて……。

 すっげぇ惨めだ。

 体格差だってあまりないし、自慢じゃないけど俺、結構体育には自信あるし、あんな引きこもりに負けるなんて……。

 悲しくて、苦しくて。じんわり涙が溢れてくる。

 視線を下に向ければ、見えるのはあらわになる下半身と、そして高橋の白濁を受けた身体だ。

 流れてくる涙をゴシゴシと擦り、消し去れば、ベッドの下に、プラスチックのケースが見えた。

 怠い身体を動かし、それに手を伸ばす。


「なんだよ……これ」

 ベッドの下には、隠したつもりなのか。

 それはゲームソフトのケースだった。

 パッケージを見た瞬間、俺の頭がフリーズした。

 だって、そのパッケージ。女の子の顔が、俺と似ているんだ。大きな二重の目に、小さな鼻。髪型こそ違うものの、顔はまんま俺だ。

 俺のこの女顔は昔からコンプレックスで、ずっと悩んでいたものだった。



 ……まさか。

 まさか、それで彼奴は俺を抱いたのか?

 俺をこの子と思い込み、二次元の存在を被せて、俺を……?


 そう思ったら、怒りが込み上げてくる。

「ごめんね、これで拭いて……」

 タイミング良く高橋が濡れたタオルを持ってきた。

「ふざけんなっ! なんだよこれっ!!」

 俺は怒りにまかせて、高橋にゲームのケースを投げつけた。

「あ、そ、それは……」

「此奴の代わりで俺を抱いたのかよっ!?」

 なんだよそれ、俺、最悪じゃんっ!!


 悔しい。

 苦しい。

 悲しい。


「違うっ!!」

「違うって何がだよ?」

「この子を、名取と置き換えてゲームしてたんだ。僕、僕は……名取くんに一目惚れしてっ!!」

 高橋? なにを言ってるの?


「ごめん、あの、ほんとに……ごめん」


 最後の、『ごめん』は、今にも消え入りそうな声だった。

 ヤられたのは俺の方なのに、高橋の方がずっと苦しそうで、居たたまれなくて、俺は無意識に手を差し伸べ、丸まった彼の背中を包み込んだ。


「な、とり?」

 おかしい。

 俺、強姦紛いなことをされたのに、身代わりじゃないって思ったら、すごくホッとしてる。

 高橋を抱きしめるなんて……。

「身代わり、もういらねぇな」

 って、俺、何を言ってるんだ!?


「っつ、名取くんっ!!」



 もうダメだ。放っておけねぇ。

 今の自分がなんだか可笑しくて笑えば、高橋は俺の口を塞いだ。

「好き、好きだ。名取くんが好き」

「っん、うう……」

 口の中に高橋の舌が滑り込む。

 俺も負けじと舌を絡み合わせ、吸い付けば、ベッドに倒された。


「もう一回、してもいい? ココに、俺を挿入(い)れたい」

 尻をなぞられれば、高橋の肉棒が俺を貫いたあの快楽が襲う。

 腰が揺れたのを同意と見たのか、俺の足を広げた。

 勃ち上がった俺の陰茎の下で、高橋の反り上がった肉棒が見える。

「名取くんの中、トロトロだ」

「言うなっ!!」

 そう言ったのは恥ずかしいからだ。今度は、もう、拒絶はしない。

 だから俺は、高橋のほっそりとした背中に腕を回した。

「名取くん可愛い、可愛いっ!!」

 高橋は俺を愛でる。

「っひ、う、あああっ!!」

「ここが悦(い)いんだよね」

 さっき俺が感じた場所を覚えていた高橋が、反り上がった肉棒で中を擦る。

「っひ、やあ、そこ、擦ったら!!」

「名取くんっ!!」

「あっ、あああああっ!!」

 高橋の、深い抽挿。二度目の吐精を注ぎ込まれた。





「ガッコ、明日から、来いよな」

「うんっ!」

 すべてが終わったあと、ベッドの上で高橋に包まれている俺は口を開き、明日のことを伝える。

 高橋の長すぎる前髪が邪魔で上げれば、顔をほころばせ、満面の笑みを浮かべた彼の顔があった。

 頬を紅色に染め、口元は弧を描いている。

 なんだよ、ものすげぇ可愛い顔してるじゃねぇかっ。


 くっそ、嬉しそうにしやがって。

 笑う高橋を恨みがましく睨みつけると、額に唇を落とされた。


 ……ああ、どうしよう。胸が苦しい。

 明日から、俺の心臓はもつのだろうか。



 **END**


- 8 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom