れんやのたんぺんしゅ〜★
キミがスキ ※r18





chapter:大好きッ。




 ◆



 ボク、三毛(みけ)。

 ボクは、ほんの少し前まで人間じゃなかった。

 人間になる前のボクは三毛猫。猫だったんだ。

 ボクが猫だった時、夜道を散歩していたボクは大きなカタマリにはね飛ばされそうになったところを、ある人に助けて貰ったんだ。

 ある人っていうのは、ボクが大好きな人。

 それでボクは神様に、『大好きな人の傍にいたい』ってお願いして、人間にしてもらったの。

 ボクが大好きな人は、何でも、『ゾク』? とかいうので、大きくて硬いカタマリに乗って、夜を走る。名前は龍(りゅう)サン。

 正直言って目付きは悪いし、いつも怒っているようにも見える。それに肩も広くて胸も分厚くて背が高い。見た目はすごく恐い。でも、すっごく優しい人なのは、助けて貰ったから知っている。


「龍サン、好き〜」

 龍サンの分厚い胸にほっぺたをスリスリしたら、ちょっぴり乱暴だけど頭をポンポンって撫でてくれる。

 そのおっきな手が好きッ。

 嬉しくてそのままゴロゴロしてたら、ボクの背中に手が回る。


 ギュってしてくれる。


 お母さんみたいに優しくて、お父さんみたいに力強い。

 ……懐かしい。


 お父さんとお母さんが生きていた頃のことを思い出す。

 龍サンの傍はとてもあたたかくて、涙が出そうだ。


「龍サン……」

 涙で滲んだ世界で龍サンを見上げると、だけど龍サンは慌ててボクを引き剥がす。


 そして、いつものように……。

「お前、帰れ」


 この一言。

 優しくしてくれたと思ったら突き放されて……。

 龍サンたちと敵対している、『ゾク』? に襲われ、助けて貰ってから三日が過ぎる。ご飯を与えてくれたり、夜はこうして一緒に寝てくれたり、相変わらずボクを傍に置いてくれるものの、ずっとこんな調子だ。

 いつもなら、『いや』で終わらせるんだけど、今日はほんのちょっぴり本当のことを言ってみる。だってずっとこんなやり取りするのは嫌だモン。


「行く場所ない」

 ボクってば人間になったから、どこにも行くあてがない。

「家族は?」

「去年、交通事故で、天国に行っちゃった……」

 ボクのお父さんとお母さんは人間が乗る、箱みたいなおっきなカタマリにはね飛ばされた。

 それ以来、ボクは仲間たちと一緒に過ごしていた。

 ご飯は近所のおばあちゃんがくれるお魚と、それからゴミ箱をあさって過ごしていた。


 お父さんとお母さんのことを考えると、ものすごく悲しい。


 今までは仲間がいたけど、人間になって、龍サンの傍にいるようになってからは、もうひとりぼっちになっちゃった。

 ボクにはもう、龍サンしかいない。

 その龍サンにも捨てられたら……ボク、どうなっちゃうんだろう。

 ひとりぼっちだと思うとシュンとしてしまう。

「……悪かったな。嫌なことを思い出させた」


 龍サンの手が、またボクの頭に乗る。

 ポン。

 ポン、ポン。


 頭を撫でられるのが心地いい。


「年齢は……少し細身で背も低いが、大学生くらいだよな? どうやって生きてきたんだ?」

「一緒にいてくれるひとを頼りに……」

 仲間たちや、いつも魚をくれる人間のおばあちゃん。今頃どうしているかな……。


 お父さんとお母さんたちのことを思い出し、お布団の上に視線を置いたまま、悲しい気持ちで話した。


「……うそだろ? 他の男に春を売ってたってのか? そういうふうには見えねぇのにな……。いや、この顔だ。言い寄ってくる男はごまんといるか……それにあいつらも襲ってたし……」

「?」

 春? 春って売り物なの? 勝手に来るものじゃないの?


 龍サンが何か良くわからない言葉をブツブツ言っている。

 首を傾げていると、龍サンは、『う〜ん』と低く唸った。なんだかその唸り方、縄張りを守っている時のイヌさんみたいだ。

 イヌさんはいつもそうやって塀を跳び越えるボクたちを目の敵にするんだよね。


「……わかった。もういい。お前は俺の傍にいろ。それでもって勝手に出歩くな。これからはお前の身体は俺のもんだ。誰にも渡すなよ?」

「?」

 よくわからないけど。

 それってつまり、龍サンの傍にいてもいいっていうことだよね?

「うん、約束するっ!!」

 腰にしがみつき、お腹にほっぺたを擦り寄せる。



「お前はなんでこうも保護欲を引き出すんだろうな」

 ポンポン。

 ボクの頭を撫でてくれる。

 ホゴヨク? よくわからないけど、まあいいや。


 だってこれからもずっとずっと龍サンと一緒なんだモンッ!!



 **END**


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