れんやのたんぺんしゅ〜★
ひと夏の恋※r18





chapter:ひと夏の恋※r18







 彼の楔が俺を貫く。


 心地良くて、彼の上で腰を振る。その度に、反り上がった自身からは白液が飛び出て彼の腹を濡らす。

 俺よりもずっと太くてたくましい雄に貫かれ、限界を感じた。

「んっ、俺、もうっ!」

 首を振り、達することを伝えると、彼は俺の腰を掴んだ。

「一緒にイこうか」

 彼の手によって俺の腰が浮き、楔が抜けていく……。

 ――そうかと思った瞬間、重力と一緒に引っ張られ、彼の熱い楔が内壁を掻き分けて一気に貫いた。


「っひ、あつっつぅううい、あああああっ!!」

 達した俺の身体は大きく反れ、最奥を貫いた彼の楔が白濁を注ぐ。


 俺は彼とほぼ同時に果て、深い眠りに導かれた。


 目を覚ましたのは空が白じんでからだ。

 ベッドの上にあるアナログ時計を見ると、時間はまだ五時だった。

 俺の隣には、年はたぶん三十歳前後くらいだろう。切れ長の目を伏せ、長い睫毛が見える。

 すっと通った鼻筋の下には魅力的な薄い唇は少し開いている。この唇に……いったい何度口づけされただろう。

 身体のすべてで、彼のキスを受けた。

 彼は、昨夜、俺が引っかけた夜の相手。

 ここ、金沢の別荘で付き合っていた人と過ごす筈の夏。大学が夏休みに入る前、彼からの突然の別れを告げられ、キャンセル代ももったいないからと一人でやって来た傷心旅行。

 もちろん、目の前の彼とは何の面識もない。

 初めての相手に身体を開くなんてどうかしている。

 そう思うのに、だけど、彼に誘われると、嫌とは言えなくて、むしろ悦んでいる自分さえもいた。


 もしかすると俺って淫乱だったのかもしれない。セックスなんて初めての経験なのに、抱かれるのが心地良かったなんて……。

 だけど、これは恋じゃない。

 俺はひとりでいるのが寂しくて、夜のバーにいた好みの彼――一颯(いぶき)さんに声を掛けた。

 自然とホテルに足が向かって、気がつけば身体を交えていたんだ。

 お互い、少し夏の暑さにあてられただけ。

 だからこれで彼とは終わりだ。


 それなのに……たった一夜なのに、おかしいな。半年間付き合っていた彼氏よりも離れたくないと思っている。

 それはきっと、一颯さんがとてつもなく優しかったから……。

 セックス未経験の俺なのに、俺に合わせて優しく手ほどきをしながら快楽を教えてくれたからだ。




 ……喉、乾いた。


 俺は何かを着るのもダルくて、足元にあったタオルケットを羽織り、ホテルに備え付けになっている冷蔵庫を開けた。ペットボトルに入った水を見つけ、喉を潤す。

 喘ぎすぎたからだろう。喉がヒリヒリする。

 ヒリついた喉に水が通り、じんわりと体内に広がっていく……。


 潤った喉からは嗚咽が弾き出る。

「……っつ」

 そうして気がつけば、カーペットに膝を突き、俺は泣いていた。


 ……好きだった。俺と同じ性癖を持っている彼となら、ずっと一緒にいられると思った。


 それなのに……。


『お前って、自分から甘えないよな。そういうとこ、正直飽きた』


 学生の俺とは違って社会人の彼にあまり負担をかけてはいけないと気遣い、寂しいっていう気持ちも押し殺して頑張って耐えて、いつも笑っていたのに……。


 頑張ったのに、捨てられた。


 ベッドで眠っている一颯さんだってきっと、俺のことはただの一夜の相手。すぐに俺を捨てる。


 あんなに情熱的に俺を抱いてくれたのに……。


 一颯さんは大人だ。子供な俺とは違う素敵な恋人がいるに違いないだろう。


 元彼のように……俺を簡単に手放すんだ……。


「っひ、もう、やだ……」

 目尻に溢れる涙が止まらない。


 言いようのない孤独感が俺を襲う。蹲り、ひとりで泣いていると、背後から手が伸びてきた。

「何故、泣いているの? 辛いことでもあった?」

 テノールの声が、泣いている俺の耳元で聞こえる。俺を抱きしめてくれるその力強い腕を離したくないと思ってしまう。


 首を横に振り、口角を上げる。

『君は甘えない』

 俺の脳裏には、元彼の声が残酷に響く。

 悲しいのに――苦しいのに笑う俺は、一颯さんの目から見ても滑稽(こっけい)に写るだろうか。


 そう思うと、涙は止まらない。


「俺なら、君を悲しませない。ずっと見ていたんだ。君を……」

 嗚咽を吐き出し、俯けていると、一颯さんからの思いもしない言葉を耳にした。

「えっ?」

「あのバーで君と居合わせたのは偶然じゃない。そう言ったら、君は俺を嫌うだろうか」


 びっくりして振り向き、顔を上げれば、一颯さんの手が伸びてきて、俺の目に溜まった涙を親指で拭った。

 クリアになる視界の先では、苦笑を漏らす、綺麗な顔が見える。


「彼と俺は同じ性癖を持った、いわば悩みを言える同士のようなものでね。

俊征(としゆき)と肩を並べて歩いていた君の姿が頭から離れなかった。一週間前かな、俊征から、年の離れた恋人と別れると聞いてね。正直、腸が煮えくりかえるほどの怒りを感じたよ。あんなに愛らしい恋人を捨てるなんて――って。だが、それをチャンスだとも感じた。なにせ俺は君に一目惚れをしていたからね。

俺とはダメ? 未練たらしくこうして金沢まで君を追いかける俺は気持ち悪い?」


 俺は……。


 そこで気がついたのは、俊征さんと別れたから泣いたんじゃないっていうことだった。


「たった一夜だけど、俺、どうしよう。すごく嬉しい」


 本心を告げれば、俺の身体が引き寄せられた。

 彼のたくましい腕の中に包まれれば、タオルケットがカーペットに落ちる。


「好きだ」

 恋心を告げた薄い唇が俺の唇を塞ぐ。


 俺は両腕を一颯さんの後頭部に回し、深くなる口づけに酔いしれた。



 **END**


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