れんやのたんぺんしゅ〜★
戯れ※r18





chapter:戯れ




 ◆



 華武(かぶ)高等学校、六階の最上階。オレンジ色の柔らかな夕陽が窓から差し込み、廊下を照らす。

 時刻は午後五時。下校時刻はとうに過ぎ、いるのは部活をしている生徒と先生ばかりだ。

 日中の静かな校内とは打って変わって、やや寂しい。

 そんな中、生徒会室に不似合いな金属音が何やらカチャカチャと聞こえてきた。

 まさか泥棒か?

 いやしかし、高校の、しかも最上階にある六階で何を盗むというのだろうか。

 俺、汐 樹(うしお たつき)は足早にドアまで移動すると、取っ手に手をかけ、開けた。

 てっきり鍵がかかっているのかと思いきや、勢いよくドアが開き、室内の全貌が明らかになる。

 そこにいたのは、紺色のブレザーと、ねずみ色をベースにした、ブレザーと同じ紺色のチェック柄の、俺と同じ華武高校の制服を身にまとった、俺よりも一年上の先輩。三年の茶髪を地毛だと言い張る彼が、床の上であぐらをかいていた。

 彼はこの華武高校の生徒会長。由良 四季(ゆら しき)だ。

「何をしていらっしゃるんですか?」

 訊(たず)ねながら、俺は彼の他に不審な人物はいないかと慎重に床の上にいる生徒会長に近づく。

 由良さん以外は他に人の気配はない。どうやらやはり俺の思い過ごしのようだ。ほっと胸を撫で下ろした俺の目に、そこでおかしな光景を見た。

 由良さんの両手首に手錠がかけられていたのだ。これはいったいどういうことなのだろうか。俺は眉を潜め、彼の手にある手錠に釘付けだ。

 俺の視線の行く先を察した彼は、口角を上げた。


「いや〜、放課後だし暇だから警察ごっこをしようとしたら手錠が外れなくなっちゃって……」

 薄い唇を弧に描き、話す。


「はあ?」

 由良さんはなぜ、警察ごっこなんぞというものをしようとしたのか。そもそも手錠なんてどうしたのか。当然、高校に必要なものではない。

 彼はいつもこうだった。俺には理解不明な言動や突拍子もないことを突然することが多々ある。

 厄介ではあるが、そういう予測不明なところもまた、他の生徒たちに受けるのも事実だ。

 ――俺たち生徒会は生徒たちの人気で決まる。ましてや生徒会会長ともなれば、それは結構な投票数にもなるわけで……。

 だから男女共に彼は絶大な人気を誇っている。

 たしかに、由良さんの容姿は足が長く、すらりとした体型だ。茶色い目を縁取った長い睫毛。高い鼻梁の下にある大きな薄い唇。彼は美形だ。

「まいったな〜」

 彼は腕を動かし、静かな室内でひたすら金属音を立てている。

「鍵とか、ないんですか?」

「ただの子供向けのオモチャだからそんなものはないよ。実際、俺だって何度か付け外ししているし……」

 俺が訊ねると、彼は苦笑を漏らし、そう言った。それっきり、由良さんは口を開かず、ただただ手だけを動かす。

 何度か手錠を使っているとはいったいどういう時なのか。

 彼が手錠をかける時の主な目的を知りたいような知りたくないような、複雑な思いだ。


 俺の目下で彼の腰が揺れている。ブレザーから覗く白のカッターと、ズボンのベルト。うなじやらが目に入ってきた。

 やはり由良さんは生徒から選ばれることもあり、とても綺麗だ。

 ――そう。俺は由良さんに恋心を抱いている。

 はじめは彼の理解不明な言動に苛立ったこともあったし、反発だってした。俺の方が責任感もあるし真面目だし、自慢ではないが統率力だってそこそこあると自負している。だが、彼は不思議な人で、気がつけばいつだって輪の中心に立っていて、その場を和ませる柔らかな空気もある。

 知らない間に、彼に惹かれていた。その気持ちをひたすら押し隠し、今までずっと生徒会でうまくやっていた。だからきっとこれからも……。

 そう思っていたのだが、今日のこれは大きな誤算だ。

 なぜ、今日に限って書記が来ないのか。なぜ、会長は手錠をかけているのか。俺の前で無防備な姿をさらさないでほしい。

 俺はため息をつき、一刻も早くこの状況を打開すべく、彼と一緒に手錠を外そうと近づいた。

 それがいけなかった。

 由良さんの赤い舌が見えたんだ。

 薄い唇を舐めるその舌がとても艶めかしくて、気がつけば俺は手を伸ばしていた。


「……会長」
 伸ばした手を顎に乗せ、唇の角度が上がったのを確認した俺は自らの唇を押しつけた。

「うん? んぅううっ?」

 由良さんの戸惑う声が交える唇の中に消える。

 俺は構わず、舌を伸ばし、先ほど薄い唇をなぞった舌を絡め取る。

「ん、っふ……」

 俺の舌が動くたび、淫猥な水音が奏でられる。

 由良さんが欲しい。俺の下肢が疼く。

 俺はそのまま胸板を押し、彼を床に倒す。

 シャツの下へ手を伸ばし、肌をなぞる。

「ちょっ、何して!!」

「お馬鹿な貴方が悪いんです」


 そう、俺の予測を超える由良さんの行動が悪い。

 だから俺は知らないうちに目で追うようになり、気がつけば由良さんのことばかり考えてしまう。

 シャツを捲り、ブレザーごと上げると、そこには日に焼けた健康的な肌が見える。

 それと、紅色の可愛らしい乳首だ。

 俺は強調していないその乳首を摘み、先端を弄ぶ。

 羞恥に襲われた頬を朱に染め、潤んだ目が俺を見る。


「やっ、待っ!!」

 息を詰めるその声が――浅い呼吸するたびに膨らんだり萎んだりするその胸が――俺を興奮させることを彼は知らない。

「由良さん……由良さん……」

 俺は両乳首を舌を這わせて貪り、彼の腰に巻き付いていたベルトを取り外す。ズボンを下ろせば、ボクサーパンツがじんわりと濡れていた。

「興奮しているんですか? 膨れていますね……」

「ちょっ、やめっ!! ああっ!!」

 揉み込むようにして由良さんの一物に手を這わせると、彼の腰が揺れる。

 太腿の間に自分の雄を刻みたい。早く由良さんを抱きたくて、俺はボクサーパンツを膝下まで引きずり下ろすと足を上に固定して開かせた。

「汐?」

 息を飲む。それさえも無視して、あらわになった後ろの孔に指をひと息に突っ込む。

「いっ、ああっ!!」

 悲鳴にも似たその声が俺の良心を攻撃する。だが、ここまできた以上、今さらもう止められるわけがない。

 終わった後、きっと口さえも聞いてくれなくなるだろう。それどころか、殴られるかもしれない。

 それでも俺は今、由良さんが欲しかった。

 後孔に指を突っ込めば、狭い内壁が侵入した指を締めつける。思った以上に中が熱い。

 俺は空いている手で由良さんの一物を包み、扱く。

 そうすると、若干、指を咥えている内壁が緩くなった。

 腰が揺れていく……。

 俺の手でもっと乱れていく彼を見たい。執拗に陰茎を弄り、中では指を動かす。すると凝りのようなものに気がついた。

「っひ、いたっ!!」

 その凝りに触れた時、腰が大きく揺れた。たしかここは前立腺がある場所ではなかっただろうか。

 俺は由良さんの反応を確かめるように、執拗にそこばかりを擦り続けた。

 由良さんの陰茎からは絶えず蜜を放ち、腹部を濡らしていく。

 淫らなその姿に我慢できなくなった俺はジッパーを下ろし、これ以上ないほど膨れ上がった一物を取り出した。

 たっぷりと濡れそぼっている後孔に自らの陰茎を指の代わりにあてがい、ゆっくりと沈ませる。

 そこで見えたのは手錠で固定されていた手が自由になっていたことだった。


 殴られる。

 覚悟した俺は目を閉ざす。だが、痛みは一向にやって来る気配がない。

 俺の背に両腕が回った。

「ん……ああああっ! 汐……」

 薄い唇が俺の唇を塞ぐ。

 このまま、抱いてもいいのだろうか。

 俺は疑問を抱きながら、恐る恐る彼の中に陰茎を沈め、最奥を貫いた。

 



「……すみません。やらかしました」

 俺は今まで溜まっていた欲望を由良さんの中に注ぎ込み、ほぼ同時に二人で果てた後。がっくりと項垂れ、謝る俺の耳元で、彼は静かに口を開く。

「……いや、謝るのは俺の方だ。本当は、手錠、外れていたんだ」

 首を左右に振った。

「はああっ?」

「いや、いつも視線を感じていたから気になっていたんだが、実際は俺のことをどう思っているのか気になって……すまん」

「もう、なんですかそれっ!!」

「ごめん、ほんっと。でも、初めは俺を嫌っていただろう?」

「知っていたんですか?」

「おかしな奴だというのは自分でも自覚しているけどね、俺はこう見えて、けっこうそういうのは見ているんだよ? しかし、まさか抱かれるとは思わなかった」


 ケタケタと明るく笑うその声が心地好い。

 気がつけば、俺はまた由良さんの唇を奪っていた。

「汐のそういう純粋で一途なとこ、すごく好きだよ」

 唇が離れたその後で、彼は俺への想いをそっと打ち明けた。



 **END**


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