(二) その日も、その次の日も――。 菊生(きくお)は触手に身体を陵辱され、次第に与えられる快楽に溺れていった。 最近では自ら腰を揺らし、後孔に挿入される悦に浸る。 「っひ、ああっ、もうおねがっ!! 後ろにちょうだいっ!!」 菊生は欲するままに触手を貪り、吐精する。 しかし、正気に返る時もある。吐精を終え、付喪神に陵辱された後には必ずと言っていいほど、快楽に溺れる自分が惨めだとも思う。 菊生は快楽を知ることと同時に、恥辱に涙を流すことも増えていた。 「お目覚めでございますか? こちらをお持ちしました」 いつの間にやら自分は眠っていたらしい。女が音もなく座敷に入ってくると、粥を差し出した。 幾度となく吐精を繰り返す菊生の身体は鉛のように重い。 力なく起き上がると、するりと赤い着物が落ちた。 どうやって着たのかはわからないが、情事の後、菊生の身体には必ずと言っていいほど新しい着物を着せられ、こうして赤い着物が乗っている。 もしかすると、この女が寄越(よこ)したものだろうか。そうは思いながらも、しかし菊生は女に礼を言う気にはならなかった。 「食べたくない」 代わりにぶっきらぼうな言葉が赤い唇から飛び出る。 「主から、食すようにとのご命令でございます」 女が言った主とは、おそらくはあの無数の触手を持つ付喪神のことだろう。 女はやはり無表情のまま、粥とレンゲを菊生の膝元に置き、座敷から立ち去る。 「……」 そうは言ったものの、達した後で食べる気力さえもない。 両親には先立たれ、自分は死ぬことも許されないまま身体を穢し続けなければならない。 菊生は残酷な自分の運命から逃れたくてうずくまる。 寒い。 身も心も――。 剥き出しの冷たい床が身に染みる。 絶望が菊生を襲う中、突然、髪を撫でる手が現れた。その手の動きはとても優しく、菊生を宥める。 両親を失ってからというもの、そのような気遣いを自分に与えてくれた者はいない。 それに、差し出されたこの手は力強い、男のものだ。 ここには男はいない。 だからこれはきっと夢に違いない。 目を開ければ、この夢が終わってしまう。 そう思った菊生は目を閉ざしたままにした。 目頭が熱くなる。 目尻から涙が込み上げてきた。 「っひ、ううっ……」 引き結んだ赤い唇からは嗚咽が漏れる。 菊生は手を伸ばし、頭を撫でてくれる骨張った力強いその手を取った。 するともう一方の手が伸びてきて、菊生の丸まった身体を包み込んだ。 菊生は夢の中、労りを見せてくれる誰かに身を委ね、甘えた。