(八) 形の良い薄い唇が柔肌をなぞる。 その度に藤次郎はほどよい肉付きをしたしなやかな身体が弓なりに反らし、彼の唇を受け入れる。 藤次郎の根元を縛る戒めはもうすでに解かれ、先走りと共に白濁が流れる。 精を放ち脱力していく身体は、しかし愛おしい彼の愛撫によってふたたび熱が灯りはじめる。 銀之助の一物はいまだ屹立を保ったまま、藤次郎を貫いてはいない。 彼の舌が乳首を捕らえ、嬲り、または骨張った指がツンと尖ったそこを摘んでいるだけだ。 それでも藤次郎は吐精を繰り返してしまう。 片方の手が幾度となく精を放つ淫らな陰茎をそっと包んだ。 藤次郎は反射的に放尿してしまった。 夜具が藤次郎の放ったはしたない液で濡れていく。 幾度となく達した身体は敏感になっている。少しでも刺激を与えられれば抗うことはできない。 藤次郎は身体を反らし、ひたすらに甘い声で喘いだ。 いよいよ銀之助が欲しくなった藤次郎は両腕を後頭部に回し、両足を彼のたくましい腰に巻きつける。 銀之助は獣のようなくぐもった声を上げると、雄々しく反り上がった楔を魅惑的な窄まりに打ち付けた。 「ああっ!」 身が焼けるほどの狂わしい熱に貫かれ、藤次郎の唇からは嬌声が放たれる。 藤次郎を求めて呻く銀之助が愛おしい。 藤次郎は傷を負い、硬く閉じられている右目に唇を落とした。 するとそれを合図にするようにして、銀之助は肉壁の中で動きはじめる。 深く、浅く。 中を貫く彼の行為は夜が更ける頃まで続いた。 藤次郎は腰を揺らし、銀之助から吐き出される白濁を一滴もこぼさないよう、彼のたくましい腰に両足を絡め、精を強請った。 外では霧雨が降っている。 弥兵衛がお縄になり、いったいどれほどの時間が過ぎただろう。 幾度となく銀之助の白濁を受けた藤次郎の身体は心地好い眠りに誘われる。 「愛している」 薄れ行く意識の中、無愛想な彼が告げた言葉はまるで、渇ききった大地を潤すこの霧雨のようだと藤次郎は思った。 (俺も、愛している) 藤次郎はたくましい腕に身を任せ、その唇に笑みを浮かべた。 ―落着・完―