*恋色童話集*




chapter:人魚姫~深海の底で




「どうして? どうしてクライドまでそんなふうに言うの? クライドはすごく綺麗だよ?
そりゃ、クライドは僕たちとは違って尻尾の代わりに、人間みたいな二本の足があるけれど、でも少しもおかしくない。
すらっとしていて、すごく綺麗……。

――それに、前ね、人間の船が難破して、『彫刻の石像』が、僕らの住む場所に落ちてきたんだけど、クライドの肌の色は、『彫刻の石像』に似ていて綺麗だ。

あと、かかとまである髪も、深海よりも深い藍色で、目だって金色ですごく綺麗。

あ、このあいだ、人間が使う金貨も見つけたんだけど、その色に似てるかも!!」



フランはそこまで言うと、少し控えめに俺のすぐ目の前までやって来た。



「僕は、クライドの右の傷なんて全然怖くないし、不気味だとも思わない……」

細い腕を伸ばし、右の顔を隠している前髪を掻き分けた。

そこにあるのは、右目から口まで伸びた古い傷跡だ。

これは、俺が幼い頃、両親に捨てられ、サメに襲われた時にできたものだ。



――両親が俺を捨てた理由。
それは、俺の両親はごくごく一般的な人魚だったにもかかわらず、ふたりの間に生まれた俺は二本の足を持つ、人間のような姿だったこと――……。

そして、魔力を持っていたことだ。

それゆえ、俺は人魚の世界から追い出され、この闇の中に住んでいる。


皆、自分たちとは違う容姿をした俺を恐れ、拒絶する。





- 32 -

拍手

[*前] | [次#]
ページ:

しおりを挟む | しおり一覧
表紙へ

contents

lotus bloom