chapter:人魚姫~深海の底で 「どうして? どうしてクライドまでそんなふうに言うの? クライドはすごく綺麗だよ? そりゃ、クライドは僕たちとは違って尻尾の代わりに、人間みたいな二本の足があるけれど、でも少しもおかしくない。 すらっとしていて、すごく綺麗……。 ――それに、前ね、人間の船が難破して、『彫刻の石像』が、僕らの住む場所に落ちてきたんだけど、クライドの肌の色は、『彫刻の石像』に似ていて綺麗だ。 あと、かかとまである髪も、深海よりも深い藍色で、目だって金色ですごく綺麗。 あ、このあいだ、人間が使う金貨も見つけたんだけど、その色に似てるかも!!」 フランはそこまで言うと、少し控えめに俺のすぐ目の前までやって来た。 「僕は、クライドの右の傷なんて全然怖くないし、不気味だとも思わない……」 細い腕を伸ばし、右の顔を隠している前髪を掻き分けた。 そこにあるのは、右目から口まで伸びた古い傷跡だ。 これは、俺が幼い頃、両親に捨てられ、サメに襲われた時にできたものだ。 ――両親が俺を捨てた理由。 それは、俺の両親はごくごく一般的な人魚だったにもかかわらず、ふたりの間に生まれた俺は二本の足を持つ、人間のような姿だったこと――……。 そして、魔力を持っていたことだ。 それゆえ、俺は人魚の世界から追い出され、この闇の中に住んでいる。 皆、自分たちとは違う容姿をした俺を恐れ、拒絶する。 |