*恋色童話集*




chapter:人魚姫~深海の底で




そして極め付きが、この顔の傷……。

これがまた、俺の評判を悪くする。



だが、フランは俺を怖がらない。



……スル。

フランの指先が、俺の古傷にそっと触れる。


「そんな傷なんか気にならないくらい、クライドのスッと伸びた鼻筋と、唇もすごく綺麗だから……」


輝くアクアマリンの瞳が汚らわしい俺を捕らえ、離さない。

その瞳は、いつだって俺を虜にする。


だが、俺はだめだ……。
俺はフランには相応しくない。


俺は小さく首を振り、フランから距離を置いた。

その瞬間、フランの表情が悲しみへと変化したように見えたのは、おそらく俺の見間違いだろう。


俺が見間違いだとそう思ったのは、憂いを帯びた顔など、どこにも見当たらなかったからだ。

彼は大きな目を、よりいっそう大きくひらいていた。

おそらく、何か楽しいことでも見つけたのだろう。



「そうだ! ね、ねねね、一緒に人間の世界を見にいこうよ。クライドなら人間に似ているし、怪しまれないでしょう?」

両の手のひらを合わせ、パチリと音を鳴らすフラン。


……また、突拍子もないことを……。

俺は二度目の深いため息をついた。


「なんでため息? だって、人間の世界って見たこともない物がたくさんあるんだよ? すっごく気になるっ!!」


フランが好奇心旺盛だったことを少しでも忘れていた自分が情けない。





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