chapter:赤ずきん~弱虫オオカミ こうしてボクは、赤ずきんくんには一生言えない想いを胸に秘める。 そんな毎日がずっと続くと思っていた。 だけど事態はある日、急に変わった。 お日さまが空高く昇るお昼。 村に住む大人たちがみんな森の集会で村を留守にしていた時だ。 「や〜い、弱虫狼〜」 「泣き虫狼〜〜」 「うわ〜ん、痛いよ、やめてよっ!!」 ボクはいつものように、みんなにイジメられていた頃、赤ずきんくんの悲鳴が家から聞こえたんだ。 何事かと思って、赤ずきんくんの家に行ったら……。 「離せよっ!! このっ!!」 クマさんみたいに大きい知らない人間に、赤ずきんくんがかつがれていく姿が見えた。 これって、これって……。 大変だ!! 人さらいだ!! クマさんみたいな人間の手には猟師が持つ長い銃がある。 ……正直、ものすごく怖い。 ボクと一緒にやって来た兎くんと狐くんは、隣で腰を抜かしている。 ……怖い。 できることならこのまま、何も見なかったことにしたい。 でも、そうしたら、赤ずきんくんはどうなっちゃうんだろう。 ボクは地べたに這(は)いつくばりながら、赤ずきんくんをかついでいるクマさんを追った。 そうしたら、分かれ道のところで、仲間と合流した。 もうひとりの人間もクマさんみたいな姿をしている。 「こいつ、すげぇ上玉だな……」 赤ずきんくんを下ろし、手首を縛ってそう言うひとりのクマさんは、赤ずきんくんのアゴを持ち上げて品定めをしていた。 「ぺっ!!」 そんなクマさんに、やっぱり赤ずきんくんは赤ずきんくんだ。 どんな状況でも、とっても気が強い。 |