chapter:人魚姫~深海の底で ――――…………。 「フラン、どこにいる? 危ないから帰るぞ」 俺は大海原から顔を出し、おそらくはこの辺りにいるであろう人魚を探す。 外は夕日に照らされ、赤く染まっていた。 まるで、血のように赤いその風景が、不快な気持ちにさせてくる。 フランの身に何かあったのかと、不安にさせる。 俺は、はやる気持ちを抑え、目を細めて彼を捜す。 幸い、この辺りはあまり人通りが少なく、滅多に人間とは出くわさない。 だからすぐに人影を見つけることができた。 その光景を見た瞬間、俺の嫌な予感は的中したと知る。 砂浜で、細身の人間ふたりの間にいるのは、人魚だ。 そしてその人魚は、虹色の鱗に海藻のように美しい髪と、白い肌をしている。 彼に慕情を抱く俺が見間違うはずもない。 フランだ。 「こいつは珍しい。人魚だぜ?」 「いい金蔓(かねづる)になりそうだ」 「やだっ、はなしてっ!! クライド、クライドッ!!」 両腕を人間に掴まれ、必死に抵抗を図るフランは、何度も俺の名を呼び、助けを求めていた。 彼の悲痛な叫びが俺の胸を打つ。 「フラン!!」 「クライド!!」 「おい、なんだお前は!! どこから来た!?」 突然海から姿を現した俺を見るなり、人間は警戒心をあらわにする。 懐からナイフを取り出した。 だが、俺はポセイドンの次に強力な魔力を持っている。 |