chapter:恋って落ちるものだよね 悲壮感が漂っていた声じゃなくて……。 なんていうのかな? アイドルを見た時のような、あんな悲鳴。 なんで? どうして? 閉じた目をゆっくり開ければ、その理由はすぐにわかった。 だって、ぼくの目の前には――『彼』がいたから。 「大丈夫か鈴? あまり無茶はするな」 色素の薄いやわらかな茶色い髪に一重の鋭い目。象牙色の肌をした彼、有栖川 霧我(ありすがわ むが)。 「霧我?」 ぼくが彼の名を口に出せば……女子の黄色い声はさらに大きくなる。 「痛みはないか?」 「う、うん。大丈夫。ありがとう」 いまだ放心状態のぼくは、コクリと小さくうなずき、目の前にある整った顔を見つめていた。 「痛みはないのなら、大丈夫だとは思うが……どうする? このまま保健室に行くか?」 霧我はそう言うと同時にぼくの身体はそのままの体勢を保って浮いた。――もちろん、足は地面に着いていない。 ……お姫様抱っこというやつだ。 「!! いいっ!! 大丈夫、降ろして!!」 現状がやっと見えてきたぼくは、足をバタバタさせて綺麗に整った眉を寄せている霧我に抗議した。 それなのに、霧我は眉間に皺を寄せてぼくを見つめてくる。 「……本当にどこも怪我はしていないのか?」 こんな時でも思うのは、霧我はどんな表情をしていてもカッコいいっていうことだけ――。 |