chapter:★大好きが大きくなっていく★ その人物に気がついたのは、それから数日経ったある日のことだった。 それは他愛もない日常の放課後。 いつものように、先生に言いつけられた荷物運びをする霧我(むが)を、今日こそは手伝おうと、決意していた。 「これ、運べばいいの? 持っていくね」 「鈴(すず)? いや、これは重いからいい」 今日こそは!! ……って意気込んでも、また霧我に止められちゃうんだけど……。 でも、でもでも。 今日は絶対、霧我のお手伝いをするんだもん!! 「大丈夫だよ、これくらい。1階の保健室に持っていけばいいんだね? よいしょ……」 ――あ、重い。 地面から離して、実際に両手で持ってみると、ものすごく重たかった。 手が伸びちゃいそうだ。 でも、でもでも。ぼくだって男だもん。これくらい、どうってことないよ!! ヤケになったぼくは、ダンボール箱を胸まで上げて、体勢を整えた。 階段の一段目に足を下ろす。 その時だった。 ひとりの……女子の姿が目に入ったんだ。 身長はぼくと同じか、少し小さめの、ほっそりした子。 肩まである髪には横で三つ編みをしている。 ちょっぴり控えめな感じの女子。 女子なら他にもいるのに、どうしてだろう。その子だけは目を外すことができなかった。 だから、その子を横目に入れながら、重たい箱を手にして階段を下りはじめる。 そしたら……。 |