お願い、ギュッてして!
★第四話★





chapter:★大好きが大きくなっていく★





「あれ?」

重い箱を持っていて、しかもよそ見なんかしているから、案の定、ぼくの身体は傾いた。


コケる!!

ぼくは、やってくる激痛を覚悟して、唇を引き結び、ギュッと目をつむる。


「鈴っ!!」


そんな中でも聞こえるのは、ぼくを呼ぶ、好きな人の声。


それと、重たいダンボール箱がぼくの手から離れて地面に転がり落ちる、ガタンッっていう音も……。


……だけど、激痛はやってこない。

あるのは、ぼくを包んでくれる、あたたかくて力強い腕。




――あれ?


たしか、この感覚は前にもあったような……。

うっすらと目を開けたそこには、やっぱり彼がいた。


「鈴、大丈夫か? 怪我は?」


急な出来事で、ぼーっとしているぼくを、眉根を寄せて心配そうに覗き込む霧我の顔が目の前にある。


「あ、だいじょうぶ。びっくりしただけ……」


半ば混乱状態のまま、そう言うと、霧我は大きなため息をついた。

なんだか、呆れられているみたいだ。


霧我から少し視線を外し、階段下を見れば、そこにはガムテープで止めた部分が破れて真っ白い紙が中から飛び出ていたダンボールがひとつ転がっている。


それは、ぼくが霧我の手を煩(わずら)わせてしまったことに違いなかった。


ぼくはただ、霧我のお手伝いをしたかっただけ――。

それなのに、お手伝いどころか、霧我の仕事を余計に増やしてしまった。


大好きな人の力にさえもなれないなんて……。

――ああ、ぼくはいつでもどこでも役立たずだ。




自己嫌悪がぼくを襲う。

「鈴!! 何を考えていたんだ!!」





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