chapter:★大好きが大きくなっていく★ 「あれ?」 重い箱を持っていて、しかもよそ見なんかしているから、案の定、ぼくの身体は傾いた。 コケる!! ぼくは、やってくる激痛を覚悟して、唇を引き結び、ギュッと目をつむる。 「鈴っ!!」 そんな中でも聞こえるのは、ぼくを呼ぶ、好きな人の声。 それと、重たいダンボール箱がぼくの手から離れて地面に転がり落ちる、ガタンッっていう音も……。 ……だけど、激痛はやってこない。 あるのは、ぼくを包んでくれる、あたたかくて力強い腕。 ――あれ? たしか、この感覚は前にもあったような……。 うっすらと目を開けたそこには、やっぱり彼がいた。 「鈴、大丈夫か? 怪我は?」 急な出来事で、ぼーっとしているぼくを、眉根を寄せて心配そうに覗き込む霧我の顔が目の前にある。 「あ、だいじょうぶ。びっくりしただけ……」 半ば混乱状態のまま、そう言うと、霧我は大きなため息をついた。 なんだか、呆れられているみたいだ。 霧我から少し視線を外し、階段下を見れば、そこにはガムテープで止めた部分が破れて真っ白い紙が中から飛び出ていたダンボールがひとつ転がっている。 それは、ぼくが霧我の手を煩(わずら)わせてしまったことに違いなかった。 ぼくはただ、霧我のお手伝いをしたかっただけ――。 それなのに、お手伝いどころか、霧我の仕事を余計に増やしてしまった。 大好きな人の力にさえもなれないなんて……。 ――ああ、ぼくはいつでもどこでも役立たずだ。 自己嫌悪がぼくを襲う。 「鈴!! 何を考えていたんだ!!」 |