お願い、ギュッてして!
☆第五話☆





chapter:☆隠しきれない想い☆







「鈴くん、頑張ってね!!」

「うん、ありがとう」


今は五限目の体育の時間。

真っ白い半袖と青色をした半パンという体育着に着替え、緑色の高い木々に囲まれた、茶色い砂地が広がる運動場の真ん中に、堂々と白い石膏で引かれた4本のラインの上で、ぼく、雨宮 鈴(あまみや すず)は有栖川 霧我(ありすがわ むが)の隣に立って屈伸(くっしん)運動をしている。


――っていうのも、ぼくたち男子は今から身体測定という名の100メートル走なんだ。


勉強では霧我に追いつけっこないけど、運動ならぼくだって自信がある。

自慢だけど、運動神経はいいんだ。


その分だけでもいい。

ちょっとでも霧我に近づきたい。

好きな人と同じ目線に立ちたいんだ。



たとえ、届かない存在だとしても……。


そう思うのって、やっぱり滑稽(こっけい)なのかな。

ぼくは、いつまでたっても霧我のお荷物なのかな。

だけど少しでも好きな人と同じ位置に立って、ぼくを見てほしい。意識してほしい。

霧我の目にとまりたいって、そう思うんだ。



「大丈夫だよ、鈴くん足速いもん!! 絶対ぜ〜ったい、1位とれるよ!!」


「うん!!」


ぼくは応援してくれる女子に1位になってみせると宣言して、配置についた。


「霧我、ぼく負けないからね!!」

「……ああ」





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