chapter:☆言葉、伝えられなくて……☆ そうしたら、紅葉はぼくの顔色をうかがって、眉根を寄せる。 「……鈴、少し顔色が悪いぞ?」 「あ、なんでも……」――なくなんかはないけど、他になんて言えばいいのかわからず口ごもる。 「なんでも……? 本当に?」 あ、そうだ。 紅葉は人の顔色を見るのが得意だということを忘れてた。 昨日の出来事を言おうか。 でも……紅葉に言ったところでどうしようもない。 一度口を開けて、また閉じる。 「昨日の放課後か? 血相をかいて霧我が鈴を探しに行った時か? それともその前か?」 ドキンッ。 図星だ。 思わず心臓が跳ね、両肩が小刻みに動いた。 紅葉は何かに勘づいたらしく、茶色い瞳の奥が光っている。 「やはりな……霧我関連か?」 ――ああ、やっぱり紅葉には隠し通せない。 ぼくは観念すると、視線は床に置いて、ゆっくりと唇を動かした。 「昨日の放課後、生徒会室に行こうとした時にラブレターを霧我に渡してほしいって女子に呼び出された。どうしたらいいのか迷っていたその後、霧我が来て……」 告げた言葉は震えていた。 途中で途切れてしまったのは、あまりにも悲しい現実が待っていたから、口の中にあった唾が喉に詰まったんだ。 「なるほど、そのラブレターを渡したのか。自分で渡せと言えばいいものを……」 視線を外した目の端っこでは、紅葉が顔を左右に振っていたのが見えた。 |