お願い、ギュッてして!
☆第七話☆





chapter:☆言葉、伝えられなくて……。☆





『相変わらず、鈴はお人好しだ』

仕草で、そう言っているのがよくわかる。


「それが無理なら、『霧我が好き』なんだと本人に言ってしまえばいいのに……」


紅葉の残酷な言葉が拍車をかけてぼくを攻撃してくる。


ため息混じりで紅葉はそう簡単に言うけど……言えない。

言えるわけない。

だって……だって……。



「やっと側にいれるようになったんだよ? それを自分から手放すなんてできないよ!!」


「鈴……?」


「紅葉は、霧我と近いポジションにいて、女子からすごくモテるもん。そんな紅葉に、ぼくの気持ちなんてわかりっこない!!」




紅葉は強い。

だけどぼくは臆病者。それが、ぼくと紅葉の決定的な違い。


だからぼくは、一生、霧我には近づけない。


隣にいることができたからって、安心しているとすぐに突き放される。


ぼくは……霧我の隣にいることさえ出来ない。



……スル。

ほっぺたを流れる涙に気がついて、肘で乱暴に目をこする。


だけど、涙は全然止まってはくれない。流れるばっかりだ。


力強く輝き続ける紅葉の側に居たたまれなくなったぼくは、生徒会から背を向けた。



「本心を伝えなきゃ、取られなくてもいいものを取られてしまうよ?」


背後では、紅葉のそんな言葉が聞こえていた。





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