chapter:☆言葉、伝えられなくて……。☆ 『相変わらず、鈴はお人好しだ』 仕草で、そう言っているのがよくわかる。 「それが無理なら、『霧我が好き』なんだと本人に言ってしまえばいいのに……」 紅葉の残酷な言葉が拍車をかけてぼくを攻撃してくる。 ため息混じりで紅葉はそう簡単に言うけど……言えない。 言えるわけない。 だって……だって……。 「やっと側にいれるようになったんだよ? それを自分から手放すなんてできないよ!!」 「鈴……?」 「紅葉は、霧我と近いポジションにいて、女子からすごくモテるもん。そんな紅葉に、ぼくの気持ちなんてわかりっこない!!」 紅葉は強い。 だけどぼくは臆病者。それが、ぼくと紅葉の決定的な違い。 だからぼくは、一生、霧我には近づけない。 隣にいることができたからって、安心しているとすぐに突き放される。 ぼくは……霧我の隣にいることさえ出来ない。 ……スル。 ほっぺたを流れる涙に気がついて、肘で乱暴に目をこする。 だけど、涙は全然止まってはくれない。流れるばっかりだ。 力強く輝き続ける紅葉の側に居たたまれなくなったぼくは、生徒会から背を向けた。 「本心を伝えなきゃ、取られなくてもいいものを取られてしまうよ?」 背後では、紅葉のそんな言葉が聞こえていた。 |