chapter:☆お願い、ギュってして。☆ ぼくが口を開けて彼の名を呼ぶと、眉間に寄ったしわはなくなり、目が細まる。 唇は、相変わらずへの字に曲がっているけど、それは微笑んでいるシルシだってことは知っている。 先生は……いないみたい。 「ぼく……どうして?」 喉がカラカラで、声はどうしてもおじいちゃんみたいにしわがれた声になってしまう。 そんな聞き取りにくい声でも、霧我はちゃんと聞いてくれる。 「ここは保健室だ。鈴は裏庭で倒れたんだ。保険の先生に熱を測ってもらったら、37.7℃あった。帰宅して療養してもらおうにも、鈴の家に電話しても留守だったから、ここで寝てもらっていたんだ。――昨日の夕方、寒い中ずっと屋上の風に当たっていただろう? きっとそのせいだ」 裏庭……。 そこで思い出したのは、霧我が女子の告白を断ったことと、ぼくが……。 ぼくが、霧我に勢いで告白しちゃったことだ。 だけど、どうしてココに霧我がいるの? ぼくはたしかに霧我に告白しちゃった。 それなのに、霧我は笑ってぼくの隣にいてくれてる。 ――ああ、そっか。 コレ、夢だ。 だって、同性を好きになったと告白したのに、側にいてくれるわけがない。 だから、この霧我はぼくが創り出した、想像上の霧我なんだ。 「気分はどうだ?」 優しい霧我の声が、現実では霧我に嫌われたという傷ついたぼくの心をあたためてくれる。 |