chapter:☆好きっていう気持ち☆ 「有栖川(ありすがわ)、この箱3箱を準備室まで運んでくれ」 それは3限目。 化学の授業が終わったと知らせるチャイムが鳴った直後、化学の先生から霧我に、みかん箱くらいの大きい箱を運ぶよう、言いつけられていた。 霧我はいつもこう。 生徒みんなより成績がよくって、眉目秀麗。 それでもって生徒会なんてやってるもんだから、先生にこうやって目をつけられちゃう。 しかも、霧我の性格上、いつも返事は……。 「はい」 ふたつ返事のこれだもん。 だから先生にいいように使われちゃうんだ。 でもね、でもね。 「霧我、次も移動教室だよ?」 ――そう。 次の授業は古文。 でもって教室は4階で、ここは2階。 そんなに急がなくてもいいって思うだろうけど、移動教室が続いているため、3階にあるぼくたちの教室に戻って教科書の用意とかしなきゃいけないから、けっこうゆっくりもしていられない。 準備室はすぐ隣だし、箱を持って行くくらい、先生がすればいいのに……。 口をぷうっと膨らましてしまうぼくに、霧我がポンポンって頭を撫でて立ち上がる。 それは先に教室に行っていてという合図だ。 霧我は愚痴(ぐち)ひとつこぼさず、こうやって頑張る。 でも……でもね。 ちょっとくらい、肩の力を抜いてもいいと思うんだ。 頑張っているあなたにそう思うのは、いけないことなのかな。 |