▽・w・▽つ【わんわんほりでぃ〜】
第一話





chapter:▽・w・▽つ【わんわんほりでぃ〜】





「ぼく、千羽 一(ちわ いち)っていいます」

言葉が止まったのは、きっとぼくの名前を知りたいからだと思って、ぼくは名前を名乗った。

「イチくんだね。僕の名前は、金色 奏(かないろ かなで)。隣のクラスなんだ」

そう言うと、金色くんの手がぼくの目の付近まで伸びた。


……コシコシ。

袖で目尻を撫でられて、見えやすくなる景色――。

おかげで、ぼくは金色くんの顔を見ることができたんだ。

金色くんは、ぼくの茶色いふわふわくせ毛とは違って綺麗な襟足までの色素が薄い茶色い髪をしている。


オレンジ色の夕日にキラキラ輝いていて綺麗だから、きっと自毛なんだろう。

細い二重の目は、どんぐり目のぼくとはやっぱり対照的だ。とても穏やかで大人っぽい。

左の目尻には小さなホクロがあった。

身長も、ぼくより頭ひとつぶんくらいあるのかな。ずっと背が高い。

ぼくが155センチだから、きっと170はあるね。

すらりとした体型。

モデルさんみたいだ。

思わず見とれてしまう。



……トクン。

ぼくの心臓が小さく跳ねた。


「さて、じゃあ始めようか」

そう言って、金色くんは数学を教えてくれた。

金色くんってすごいんだ。

ぼくがあんなにわからなかった数式を優しくていねいに教えてくれた。


おかげでぼくは苦手な数学がわかったし、今日の宿題もバッチリだ。

「あの、ありがとうございました」

日が沈んで、18時を過ぎた学校帰り。

もう夜も遅いからって、ぼくの家の前まで送ってくれた。

一緒に帰った金色くんにぼくはペコッとお辞儀をして、お礼を言った。


「うん。じゃ、また明日ね」

金色くんはニコリと微笑んだ。


明日……もあるのかな。

そう思うと嬉しくて、去っていく広い背中をいつまでも見ていた。

金色くんから勉強を教えてもらえるのはその日、1日だけだと思っていた。

だけど、次の日も、その次の日も、数学の小テストの日まで放課後付き合ってくれたんだ。


ぼくがつまずいたところはきちんと丁寧にニコって笑って、わかるまで教えてくれて、それがとても嬉しくて……。


金色くんのおかげで、あんなに苦手だった数学の小テストも3個所、間違えただけだった。


お礼、何かしなきゃ。

そう思っても、ぼくは難しい勉強とか苦手だ。

う〜ん、どうしようかなぁ〜。

首をひねって考えていた、小テストがあったその日。


あっ、そうだ。

今日は家庭科で調理実習だった。
たしか、マフィンを作るっていってたっけ……。

そうか、それだ!!


実はぼく、数学とか化学は苦手なんだけど、料理はかなり自信があるんだ。

今日、小テストの結果を聞きに放課後も会う約束してるし、金色くんにマフィンをあげよう。

よっし、感謝の気持ちを込めて美味しいの作ろう。

がんばるぞっ!! お〜っ!!


そう決意した家庭科の授業が終わり、無事、見た目も味もいいマフィンを作り終えたぼくは、放課後になるのを心待ちにした。





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