憑駒操の後悔
「やはりあの少年はオールマイトと何らかの特別な繋がりがあると思っていいでしょう」
ヴィランの本拠地にて幻覚男が前の傷の男に話し掛ける
「ご苦労、後はそれを餌に、奴とぶつかるだけだな 他のヒーローはどうする」
「周りの邪魔なヒーローは捨て駒を相手してもらうのがいいですね残りの個性持ち達を学校で暴れさせます」
「ガキの連中も一応ヒーローの卵だからな他に手をいくつか考えておけソムニウム」
「・・・お任せください とりあえずオールマイトの体内にアレを仕込みましたし、まぁ一番効くのは自分より教え子のピンチでしょうけど」
ソムニウムと呼ばれた幻覚男の横に控えていた、緑谷を襲ったあの結晶の敵の身体から幽霊なような影が浮き出る
((あのソムニウム、さん ボクは))
「憑駒、お前はそいつを、"スパーダ"を命令どおりに使うだけで大丈夫ですいざとなったら仕掛けのほう、よろしくお願いしますよ 他は余計なことはしないでください」
((わかりました・・・))
それを聞いた憑狗が、"スパーダ"と名付けられた結晶のヴィランの中へ再度入りこみその場から姿を消す
便利な能力だなと関心する傷の男はゆっくりと拳を掲げ握り締めた
「やっと俺の個性が試せそうだ 邪魔はしてくれるなよ」
「はいはい後は闘拳さんの好きにしてください僕は遠くから応援してますので」
少し微笑み、やれやれといった様子でソムニウムがその場を去る
残った傷の男、堅身闘拳(けんみとうけん)がしばらく空を見つめた後、携帯を取り出した 「俺だ、作戦通りに動く兄さんも準備しといてくれ」
別行動を始めたスパーダの身体は月夜の中を駆ける
とり憑いている憑駒は複雑な心境でソムニウムと堅身に従っていた
今までごく普通の一般人だった憑狗の個性は年をとるごとに変化していく性質を持っている
幼い頃には"自分の存在の薄れ"を感じ、学生の頃には、"他人に乗り移り"身体を操作できるまで自分の身体が薄れていった まるで幽霊のように
そして今は"他人の深層"まで辿り着けようになっていった まるで相手の人生が自分の物であるかのように
個性は隠した 自分の孤立がより浮きだってしまうから両親まで自分を幽霊のように扱うのではないかと恐れていたから
それでも、こんな個性を持ってしまった自分に何か、能力を活かせる事が出来るのではないかと考えていた
しかし運悪くソムニウムと闘拳の目に留まり、半ば無理やり共に行動することになる
憑駒の個性は(憑依)相手にとり憑き、身体を思うがまま動かすごとができる危険なものだ 今思えば、ヴィランにとっては都合が良い個性なのだあの声を掛けられた時、なぜ気付かなかったのか
小さい頃から良い思いをしてこなかった憑駒は初めて自分の能力が求められ認められた気がして最初は嬉しく思っていた
誘われた時ソムニウムは人を助ける仕事だと言ったが、その内容は敵を助けるものばかりで、臆病な憑駒は止めるに止められず個性をソムニウム達の為に使うことを強いられていたのだった
((嫌だよ こんなことやっぱりボクはしたくないよ・・・))
自身の右手首には、個性を解除をすればすぐにソムニウムに連絡がいくように装置がつけられている
((うっうう・・・ごめん・・・ごめんよ・・・))心の中で押し込んだ罪悪感がよりいっそう溢れだした
今まで閉ざしていた気持ちが止まらなくなった、とり憑いた時にみた、その子のことを知れば
憑駒の個性には、とり憑いた際に知りたくもない相手の膨大な記憶や思いが頭に流れ込み "他人の深層に入り込む事"ができる
それはヴィランとしてはメリットでもあり(その直後数十分活動が停止し憑かれた人物の心は徐々に崩壊していく)"ヒト"としてデメリットでもあった
それが情報を聞きだす時や、相手の心を揺さぶるには重宝されるだろう それでも憑駒は(簡単に身体を操る事)と(最低限の情報しか読み取れない)と嘘をついた
その嘘は抵抗であり懺悔であり後悔だった 今更こんな些細な嘘をついても憑かれた相手の苦しみはとれない自分の罪は許されることはないだろう
今まで見ないように聞かないようにしてきたとり憑いてきた人達、憑駒にはもう耐えられなかった 今この瞬間にも直に、彼女が苦しんでいるのがわかるからだ
他人に話したこともないであろう過去を、思いを、心を、無理やり読まれ更に身体を乗っ取られ個性まで知らない人物に使われているのだから
逃げないことが君の救いになるなら僕の報いになるなら
必ず解放することを心に決めた憑駒は今ただソムニウムに命じられた任務をこなす事を考え雄英高校へと向かうのだった
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