幻覚翻弄


あの騒動の後学校の警備はさらに厳重に、生徒の帰宅途中は警察が見張り護衛をする、という落ち着かない日常を送っていた
「この状況いつまで続くんだろうね」
「まだ時間がかかるだろう あの事件から敵の動きがないのが不気味だな」
帰宅途中麗日と飯田と一緒になった緑谷は離れてついて来る数人の男が気になって会話が耳に入っていないようだった
「デクくん聞いてる?」
「えっごめんえっとなんだっけ」
飯田が後ろの人達をみて「今は耐えるしかないな護ってくれているのだから」と呟いた
あれからヴィランの動きがなくあのヴィランの目的はなんだったのだろうとそれぞれ考えていたのだが見えてこない
緑谷は各地に散らばっていた友人の状況と自分が遭遇した人物について飯田と麗日に話すことにした
「・・・・首謀者は緑谷くんの出会った二人のどちらか、ということか」
「どっちもデクくんを狙ってたってこと?」
「うん・・・でも幻覚の男は僕と話をした後気絶させてきただけで、もう一人の方は」
もう一人は能力を使っての攻撃、この二人は仲間なのだろうか僕を狙うなら最初の男が攻撃をしてきたはずだ
「情報収集というわけでもなさそうだな」
「私達も散らばった後ね学校に連絡しようと隠れて行動して頑張ってたんだけど突然意識失ってて目が覚めたら終わってたの他の皆もそんな感じ」
麗日が残念そうに説明した
他の皆の状況が似ていた緑谷一人を襲った結晶のヴィランに会った以外は
オールマイトが来ていなかったらあの人物と僕は戦えたのだろうかと緑谷は静かに拳をにぎりしめる
「でもよかったねオールマイトがデクくん助けてくれて」
「うむ全くだバス前で点呼が始まっていた時キミが戻ってこなかったから先生達やオールマイトが急いで探してくれたんだぞ」
「う、うん」
やっぱり気に入られてるんだねと麗日がわいわい話すうちに分かれ道に行く
「じゃ、俺はこっちなので失礼する緑谷くん麗日くん!また明日!」
はきはきと話して帰っていた飯田に手を振り残った麗日と緑谷は帰り道を歩く
(・・・な、なにか話題)
女子と二人きりで帰るという状況にどきどきしつつ緑谷は必死に話題を探したできるだけ明るい話題を
「あ、あの麗日さんは、」
そう言葉を発した瞬間周りの状況がおかしいことに気付く
誰もいない いつもの景色が淀んで見える (なにが起きたんだ・・・!?麗日さんはどこに・・・まさか攫われて・・・!?)
「攫ったりしませんよ」
最悪の状況を思い浮かべる緑谷の後ろで聞き覚えのある声がした あの幻覚の男だ
咄嗟に振り向くとやはり誰もいない護衛の男達も誰も
「皆を何処へやったんだ!」緑谷が叫ぶ
「心配ですか?」そう言ってじわりと少し遠くの地面からあの男が現れた 眠った麗日を人質にとって
「麗日さん!!・・・何を企んでるんだ・・・麗日さんを放せ!!」
くつくつと笑いながら男が近づく 人質がいる以上下手に動けない
しだいに相手の近づくスピードが速くなっていく
男は殴りかかろうと拳を振りかざすが、緑谷は背負っていたリュックを男の顔に投げつけながら走り出し、体勢を低くして
脇にいる麗日を救出を試みた が、手が触れた直後麗日の姿が消える突然の消失に驚いた拍子につまずいてこける形になった
そのおかげで振り向いた男からの攻撃を避けることができたが間髪いれずに男は向かってくる 戸惑っている暇はない
緑谷も拳を振りかざした出来るだけ最小限に気絶する程度にと、指ではじく
鈍い音が響く男の腹部に攻撃入った 反動の怪我をしていない無意識に制御できたのだろう男はそのまま後ろへ吹き飛び壁に当たる
「・・・・ッ!ぐっ・・・!!」
苦しそうにうつむいた男の姿が歪む次第に姿が変わっていく
「あなたは僕らの後ろにいた護衛の・・・!?」
返事はなかった気絶したのだ確かに護衛で緑谷たちの後ろを着いてきた男の人の一人だった
どういうことなのかと考えていた緑谷の前にあの幻覚男が現れる
「流石あの雄英の生徒!その個性は・・・そうですね、オールマイトのものとどことなく似ているようですが、何か授業以外で、接点があるのですか?」
ニッコリと笑顔で問いかける相手は明らかにこちらを探っている
「あの人を操っていたのか」
「質問を質問で返すとは・・・答えない、ということは接点がある、とみますがどうでしょう?」
緑谷は「知らない」と誤魔化したが、ばれている どこかで自分とオールマイトとの特別な繋がりがある可能性を掴んでいるのかこちらの様子を見て楽しんでいるようにも見えた
「そうですか教えてくださりありがとうございます」
深々と頭を下げて男が微笑み言葉を続けた「それと、」
緑谷の足元がぐにゃりと歪みそこからは帰宅している麗日や護衛している男が映った
「心配しなくてもどこへもやってませんよ」
薄々感じていたがどうやら男の能力にかかっているのは自分らしいと緑谷は察した
「個性は幻覚で間違いない・・・デメリットとかはわからないけど」
ピクリと反応するのがわかったが男はなんでもないかのように微笑んだ
「ま、ちょっと考えれば解りますよね ちなみにその警察には君が敵に見えるようにしたんですよ それでは僕の用事は終わりましたのでこれで失礼します」
「待て!一体何の目的で僕の前に現れるんだ!?」と制止の声も空しく景色が歪み最初麗日と歩いていた通学路に戻っていた
辺りを見渡すと男に幻覚をかけられていた護衛の男性が倒れていた
(このことを、知らせなきゃ・・・!)
呼びかけても反応がない男性を担ぎ重い足取りで緑谷は学校へ向かった

「Umm・・・・」
トゥルーフォームのオールマイトが緑谷の話を聞いて唸る
護衛の男性はリカバリーガールの治療を受けていた
「緑谷はいつまた奇襲を受けるかわからん警察以外の護衛を増やしたほうがいい が、相手が幻覚系の個性となると対応できるヒーローが限られるな」
相澤がため息をつきながらつぶやいた少しの沈黙の後オールマイトが口を開く
「・・・時間が遅くなったな緑谷少年、今日はもう家に帰りなさい私が護衛についていく」
「えっ!?は、はい」
「いや、オールマイトさんも出歩かない方がいいでしょう何かあって時間切れになったら元も子もありませんよ」
「それもそうだが・・・」
心配するオールマイトを他所に相澤はドアに向かう
「とりあえず今日は俺が着いていきます 緑谷、行くぞ」
流れるような動作で部屋から出て行った相澤を追うか追うまいかとおろおろしていた緑谷にオールマイトは声をかける
「相澤くんとなら心配ないだろう行きなさい」
「あ、あのその敵オールマイトの事も言ってました 僕と接点あるのかって・・・すみませんっ相澤先生に怒られそうなのでいってきます!」
早口で言い損ねた出来事を説明して緑谷は急いで部屋を出る
残されたオールマイトはその言葉を聞いて真剣な面持ちで敵のことを考えていた
(私と少年の接点・・・・もしや個性譲渡のことが、いやありえない狙いは・・・)
あのレッジェンダパーク事件で緑谷を襲った敵のことを思い出したオールマイトは、あの時受けた治りの遅い手のひらの傷を眺めた
「・・・私を殺すつもりならとっくにやっているか・・・」

やっとのことで相澤に追いついた緑谷は息を整えて歩く
少し離れて歩く相澤はゴーグルをしていつでも戦闘に入れる態勢だ
「緑谷、明日から例の敵と出会ったら助けが来るまでは一人で対処してみろヒーロー目指すんなら護られっぱなしじゃあ駄目だからな・・・と、言いたい所だが俺も一応教師だからなそうもいかないか」
ぶつぶつと若干小言を言われながら誰ともすれ違うことなく無事に帰宅した
「とにかくだ、敵の能力、数、目的も分からないうちは危険度が高すぎる まず出会ったら逃げろ、その後連絡 いいな?」
「はい、相澤先生ありがとうございました!」
その言葉を聞いたかはわからないがいつの間にか相澤は帰って行った
(そうだよな・・・ヒーロー目指すならできるだけ僕一人でなんとかしないと)

「・・・・一体何の目的で、か、僕はただ、今が自分が楽しければ他はどうだっていいんですよ 緑谷出久くん」

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