弱虫な君へ
私のうまれた骨継家は自身の身体を変化させるといった似通った個性を持つ者が多い 有名ではなかったがヒーローとして活動する者もいた
2〜3世代間で問題になった個性婚のこともあるだろうより強いヒーローを骨継家で生み出そうと考える者も出始める
気が強い元気な性格の母、骨継叶(ほねつぎかなえ)は剣道一家で個性は筋肉を変化させて体術、速さなど、身体能力に非常に長けている
のほほんとした性格の父、血矢心治(ちやしんじ)は、柔道一家で個性は血液を硬化させて防御、武器化など戦闘能力に優れたものを持つ
二人とも自身を変化させる能力で幼馴染だったこともありすぐに結婚、という事になったらしい
親戚はそんな有能な二人の能力を受け継ぐ子を期待していただろう周りから度々ヒーローについて話をされていた
しかし3歳で個性が現れ始めるというその頃、私に個性が現れることは無く、父から告げられた"無個性"、その言葉がひどく重かった
より強く逞しくいつか最高のヒーローになるようにと代々積み上げてきた個性の濃さは私の代で絶たれたのだから
そして母は私を産んで数年後に事故で他界、父が男手一つで育ててくれた
一部の親戚からの風当たりが強かったこともあったが両親は私を責めず愛してくれた
個性持ちのクラスメイトからいじめもあった自分の個性を見せびらかし言葉の暴力を浴びせられる
周りの友達は助けてくれない なら、自分でなんとかするしかない母の気の強さを受け継いだ私は無個性ながらそのクラスメイトに立ち向かった
そして全員に顔面パンチを食らわせてやった(もちろんいけないことだ後で先生に怒られた)
そんな事がきっかけで無個性の私が個性無しで強くなる方法、体術を何度も頼み込んで父に教えてもらうことになった
そして13歳になったあの日 私は父の生まれた地にいる祖母の家へ泊まりに来ていた
田舎の子の私には珍しい物がいっぱい溢れた見知らぬ土地でうろうろしながら探検していると
すぐ近くの公園の方でこどもの声が聞こえた
こっそり様子を伺うとどうやらもしゃもしゃの緑髪の男の子がツンツン頭の男の子とその取り巻きにいじめられているらしい
助けると緑髪の子の為にならない気もするが会話の中の無個性という言葉が聞こえて思わず前に出てしまった
「は?なにお前」
なんというふてぶてしい態度だろうザ・いじめっ子という感じだ
「お前じゃないわちゃんと名前があるよ自己紹介しないとね私は――」
自己紹介を始めようとした瞬間ツンツン頭くんが両手を構え突っ込んできたたぶん何か個性をお見舞いしようとしたのだろう
(さっと終わらせて謝らせよう)つっこんできたのをかわしたのは良かったがツンツン頭くんが私の足につまずいて勢いよく頭からこけていった
「ご、ごめん怪我させちゃったちょっとこっち来て」
自業自得なので別に私が謝らなくてもいい気がしたが相手は私より年下の小さい子、何かあっては大変だ
ちょっと涙目になりかけているのツンツン頭くんを連れて水のみ場へ
暴れる少年の擦り剥いた額についた砂を水で洗い流したポケットにあった花柄の絆創膏を貼った辺りで彼は大人しくなっていた、かと思ったら悪態をついてどこかへ走り去ってしまった
ぽつんと残された緑髪の男の子と私はお互い顔を見合わせて笑った
その後二人で色々お話をしたさっきのツンツン頭の子はかっちゃん、で緑髪の子はいずくというらしい
やっとまともに自己紹介ができたところで夕方になるまで二人で遊具で遊んだ
それから私が泊まりの期間の間毎日あの公園の所を覗くといずくがいてまた一緒にお話したり遊んだりする
たまにかっちゃんが来て遠くからいずくと私をみていた
「かっちゃんもおいでよ」笑顔で呼びかけると私のあだ名呼びに驚いて
「あっそばねぇよバカ!」と持っていたサッカーボールを地面に投げつけて走り去った
ふふふとにこやかに見送る私の横でいずくが「あのかっちゃんがはずかしがってる・・・」と呟いていたあれは恥ずかしがっていたのか
ここずっと毎日のようにいずくと過ごしたが、時に笑ったり泣いたり怒ったりころころと表情が変わるいずくをみて
弟がいたらこんな感じなのかなと一人っ子の私が今まで感じたことのない気持ちが浮かんできた
年下の友達ができて数日(もっとここで過ごしたいな・・・)でももうおしまい 明日父と一緒に元の家に帰ることになる
最後にいずくの大好きなヒーローの話を聞いた
「いずくはどんなヒーローになりたいの?」
「えっとオールマイトみたいな強くて優しくて誰かを守れるような・・・」
「ふふ、なれそういずく優しいもんね」
そう、ちょっと泣き虫だけど優しい心の持ち主 ふとあの親戚の眼差しや陰口を思い出した
恥ずかしながら話すいずくの頭を撫でるとちょっと照れくさそうに笑う もふもふしている
「優しいだけじゃだめだよ・・・心理お姉ちゃんも僕と同じ無個性ならわかるでしょ」
しょんぼりしたいずくをみて心の中で呟いた(わかるよその気持ち)
うーんと一言返してちょっとごまかした
「やっぱり・・・」がっくりと肩を落としたいずくの姿が小さい頃の私と重なる
前で楽しそうに遊ぶ個性持ちのこどもたちの笑い声が皮肉に聞こえた
彼の名前を呼んだが返事がない
「私もねヒーローにちょっと憧れてた、無個性って知る前はヒーローになって皆を守るんだって思ってた」
「周りも期待してたの、優秀な個性持ちの親からヒーローになる子が出来るって喜んでた でも無個性だった」
つい自分の過去を話してしまい、ハッとした私はおずおずといずくの顔をみる
予想通り小さな男の子の目にはじわりと涙が浮かんでいた
ごまかすようにいずくの頭をわしわしと撫でまくる
「!?いたたたた!ちょ、お姉ちゃん!」
突然の出来事に大声になるいずくを笑いながら自分から暗い話題にしたことを謝った
「ごめんごめん!暗い話になったね!でもさ、ヒーローになれなくても守りたいものは変わらないし、
なんていうか・・・無個性だけど手が届く人たちだけでも守っていこうって努力していこうって、その時思ったんだよね」
そう守りたいものは変わらない微力ながらも私の近くにいる人ぐらいは助けたい
「ま!家族を守るとか当たり前なんだけどさ 力が無くてもなにか出来ることあるって信じてる これは私の想い、だけど」
遠くを見つめていずくの反応をみないようにした 我ながら無責任なことを言ってしまったと思う 力が無くてもなにか出来ることがある、だなんて
「僕にも・・・誰かを助けれるのかな・・・」弱々しくいずくが呟いた それが自分の小さい頃と姿が重なる
「大丈夫よいずく」(つらいよね)
(ごめんね、私ほんとはいっそ諦めたほうが楽なのかもとか思ってる)胸の内の言葉が出ないままいずくに笑いかける
背後の太陽がジリジリと本音を言わない私を責めている気がした
でも、こんな小さな少年が持つ夢を、こんなたった十数年生きた無個性の私に壊されていいはずがない
応援したい気持ちと無責任なことを言ってしまった気持ちの間で罪悪感に揺れながら、自分の家族のことを思い出した
不安になったときいつも父が言ってくれた"大丈夫"
根拠は無いかもしれないけど、私が安心する言葉、いずくの小さな背中も押してくれるだろうか
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