09


考えている内に、目の前に渡殿が見えて来た。

飛龍は辺りを見回すと植え込みの陰から出て、長い屋根のある廊へと上がった。

輝夜もそれに習って、欄干に手を置いて渡殿に上がる。

その機敏な動きを見て満足そうな笑みを浮かべた飛龍は、息を吐いて呟く。

「さて、ようやく此処まで来たな」

湿った前髪を払いながら、飛龍が目を廊の先に向ける。

渡殿は少し先で折れ、最も奥まった屋根の下へと伸びていた。

「あそこが俺の部屋だ」

気軽にそう言って再び歩き出す。

後に続こうとした輝夜は、ふと覚えた感覚に一瞬足を止めた。

(あら……?)

体にまとわり付いて来るような違和感は、確かめる間も無くすぐに分からなくなってしまった。

「何をしているんだ、置いて行くぞ」

声を掛けられて気が付くと、飛龍が振り向いてこちらを見ていた。

このまま立ちすくんでいたら本当に置いて行かれそうで、輝夜は無理矢理体を動かして後を追った。

深く探れば心ごと全て捕らわれてしまうような淀んだ空気。

そんなものが、この宮中にある筈は無いのに。

何かが胸を掻き立て引っ張るのはどうして。





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