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輝夜が通されたのは、飛龍の部屋からそれ程離れていない一室だった。
豪華な部屋の中を少し心細い気持ちで眺めてから、用意されていた着替えを手に取る。
「あら、これ男物だわ。飛龍が頼んでくれたのかしら」
旅の間に男物の衣の動き易さにすっかり慣れてしまっていたから、こちらの方が輝夜には有り難かった。
袖を通すと、今まで着ていた衣よりも高価な生地が肌をくすぐる。
髪を結い直して身支度を整えてから、自分の荷物を整理する為に広げた。
弓矢に懐剣、そして僅かな着替え。
最も下に仕舞ってある衣を手に取って、ふと動きを止める。
透き通る、輝く衣。
しばらくの間見詰めて、静かに息をつく。
これを纏う時が来たなら、自分はどうするだろう。
せめて少しでも、あの寂しい背中に慰めの月光を。
近付けない心に、優しい月の雫を。
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Reservoir Amulet