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「馬鹿、此処で俺の名を呼ぶな。俺はこの辺りでは鬼若【おにわか】という名で通っているのだぞ」

返す言葉も無くした輝夜は、飛龍の何食わぬ顔を眺めた。

飛龍が一体どんな思考をしているのか、考え込んでしまう。

どうしてこんな人間が帝なんてやっているのかと思ってしまいたくなる。

だが、とにかく自分はこの男を宮へ連れ戻さなくてはならない。

しかしツケを払わないままなのは良くないし、帝だと話す訳にも行かない。

皆の希望を背負う帝がツケを払わず馬を取り上げられるなど、到底民に見せられる姿ではない。

輝夜は溜息をついて呟いた。

「……仕方無いわね」

勇ましく袖をまくり上げながら、飛龍の方を向く。

「さあ、始めましょう」

「何をする気だ?」

「決まっているでしょう、お店の呼び込みよ。私も手伝うわ」

一人より二人の方が良い筈だ。

輝夜は道行く人々に声を掛けながら、飛龍を見やる。

(全く、世話のやける帝だわ)

それでも、言葉にならない声がこの胸には届くから。

今はただ、その傷付いた心を包みたい。

分かってほしい、貴方は誰よりも。





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