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「…………」

飛龍は黙り込んで深い色の瞳を輝夜に向けた。

沈黙が二人の間に落ちた時、不意に空から雫が降って来た。

「雨か」

「あんなに晴れていたのに」

見上げた空には、いつの間にか灰色の雲が掛かっている。

雨は止む様子を見せずに強くなって来て、二人は急いで大きな木の下に入った。

木の根元に馬を繋いでから、並んで地面に腰を下ろす。

雨は他の全ての音を消すかのように降り続いている。

雨音しか聞こえないせいか、やけに静かに思えた。

しばらくは二人共何も言わず、ただ落ちて来る雨を眺めていた。

「やはり、気付いたか」

やがて沈黙を破り、重い息を吐きながら飛龍が口を開いた。

「ええ。あそこには大きな影のようなものが見えるの。亡くなった人達の嘆きが残っているんだわ。最初は宮中でそんな事がある筈無いと思ったけれど」

「宮は清さを歌ってはいるが、実際はそうではない。あそこでは数多くの争いや憎しみが渦を巻いている。死者も沢山出ているのだ」

妙に低い声で、淡々と飛龍は語る。

「光の名を掲げる帝が住まう清らかな場所、それがまほろばだ。八百万の神々がいない代わりに、人々が力を振るう。故に、争いも絶えんのだ」

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