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「どうして……」

「人の心は醜い。神を近くに感じなければ幾らでも本性を出すさ。俺も幼い頃、毒を盛られた経験がある。運が良いのか悪いのか、今も生きているがな」

飛龍の横顔は、感情を読ませない。

でも、そんな事が当たり前になされているなんて。

「そんな事を天神が許す筈無いわ。それでは人間の愚かさや浅ましさばかりが見えてしまう」

「俺もそう思う。だが、俺にはそれを止めろと言う事も出来ぬ」

自嘲気味に顔を歪めて、飛龍は続ける。

「もう長い間、宮中はそれで回って来てしまったのだ。俺が今本当の清さを語ったところで、誰も耳は貸さぬ。反感ばかりを買うだけだ。先帝の例もあるしな」

息をついて、まるで人事のような軽い口調で言う。

「俺に流れる光の血が濃過ぎるせいか、これまでに争いに巻き込まれて命を落とした人々の念は全て俺に向けられている気がする。だから宮中は息が詰まる」

「濃過ぎるって、そんな事は無いでしょう?貴方は先帝と本妻の子だと角鹿が言っていたわ」

「表向きはな。だが本当は違う。俺は先帝と、その姉の子だ。生まれてはならぬ存在だった。だから昔、本妻に毒を盛られたのだ。その後は、母上の手によって父上が亡くなるまで隠された。宮に近付く事さえ許されていなかった俺が今は帝になっているのは、母上が俺をもう既にいない本妻の子と偽ったからだ」

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