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輝夜が見詰める飛龍の横顔は、普段とあまり変わらない。

もう何度も自分の中で噛み締めた事実を、ただ口にしているというようで。

それなのに寂しそうに見えるのは、この雨の静寂のせいだろうか。

「まあ、この程度の事は宮中では珍しくもない。大体、この俺にも妻がいるしな」

「……え、ええ!?そうだったの!?」

飛龍は輝夜の反応を楽しむように横目で見ながら頷く。

「ああ。帝になったと同時に何人も来たぞ。誰も妃として娶ってはおらんが」

「そんな事、全然知らなかったわ。その奥様は、どんな方々なの?」

「会った事が無い上に、興味も無いから何とも言えんな」

「え?」

目を見張った輝夜から目を離して髪をかき上げる。

「誰も俺を好いて嫁に来た訳では無い。欲しいのは帝の子、それだけだ。事実、俺が一度も会っていないと言うのに子供が産まれている。まあその内、誰が跡を継ぐかで争いが起こるのだろうな」

「そこまで話してしまっていいの?私に」

あっさりと語られる内容に付いて行けないものを感じながら尋ねると、飛龍は軽く笑った。

「別に構わぬ。お前は宮とは縁の無い奴だからな。それに、俺も誰かに……」

聞いてもらいたかったのかもしれない。

何も知らない無垢な瞳で、ただ耳を傾けてくれる誰かに。

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